生前整理はいつから始めるべき?他の人はいつから始めるのだろう。
そんな疑問を解決します。本記事では老後の生きがい・やりがいを見つけ、楽しんで行える生前整理をおすすめします。
- そもそも生前整理とは?
- 生前整理の適齢期は?
- 生前整理が必要な理由とそのメリット
- 生前整理を老後の楽しみにするためには?
その他、無料で使えるエンディングノートのひな形もご紹介します。また最近よく耳にするデジタル遺産の注意点と対処方法についても解説します。自分はいつから生前整理を始めるべきか、親に生前整理をすすめたい、そんな方のお役に立つ情報をお届けします。
生前整理とは?
人は自分がいつ死んでしまうのかは分かりません。自分が亡くなった後に、家族や親族が困らぬように、身の回りのものや財産の整理をすることを生前整理と呼びます。そして人が亡くなった後に、家族や親族が故人の物を整理することを遺品整理と呼びますが、故人がどの程度生前整理を行っていたかにより、遺品整理の難易度が変わってくるものです。
生前整理はいつから始める?
それでは、生前整理はいつから始めるのが良いのでしょうか。
厚生労働省が発表する簡易生命表によれば、2019年時点での男性の平均寿命は81.41歳、女性は87.45歳です。さらに、健康上の問題で日常生活が制限されることなく生活できる期間である健康寿命は、同2019年時点で男性72.68歳女性75.38歳となっています。
生前整理は自分で物の整理を行うものなので、自由に体が動かなければ行うことは困難です。さらに内閣府の平成28年版高齢社会白書によれば、2年後の2025年には65歳以上の人の5人に1人が認知症になるとの予想データが発表されています。身体が元気であっても認知症になってしまうと、生前整理を行うことはできません。
この2つのデータを考慮すれば、男性も女性も60歳~65歳を目安に生前整理を行っていくのが良いでしょう。
年齢的なタイミングの他に、次の様なタイミングで生前整理を行うこともおすすめします。
- 定年退職をしたタイミング
- 還暦等のお祝いのタイミング
- 子どもとの同居開始のタイミング
- 気が向いたタイミング
生前整理が必要な理由
生前整理は、自分がこの世を去った後に家族などが困らぬように物の整理・財産の整理を行うことという説明をしました。他にも生前整理が必要な理由は次の様なものがあります。
元気な内に過ごしやすい環境を作るため
高齢になると筋力が弱まるのは普通のことで、頭で想像していたような動きができず、階段を上り損ねたり、物を跨ぎ損ねたりしてしまいます。特に女性は知らないうちに骨粗鬆症になっている人も多く、一度の転倒で骨折をしてしまい、最悪寝たきりになってしまうことも起こるのです。
このような転倒事故を防ぐためにも、床に物を置かない、高い場所に物を置かないことが大切ですが、そもそも物が多いと収納ができず、つい床に物を置いたり、棚の上に物を並べてしまいがちです。
不要な物を処分して快適な居住空間、過ごしやすい環境を作るためにも生前整理は必要になります。
相続や遺産について確認するため
人は自分の寿命がわからないため、大病にかかるなどのタイミングがなければ相続について考えることも少ないでしょう。自分に置き換えてみるとよくわかりますよね。
ネット銀行のパスワードや証券会社のログイン情報を残すことが大切と思ってはいても、まさか自分が今日、明日に死んでしまうとは思えず、今生前整理を行う必要はないと考えてしまうのではないでしょうか。相場の世界で耳にする「もうはまだなり、まだはもうなり」そのものですね。
寿命がわからないからこそ、相続関係や遺産について整理をすることが必要なのです。
人生を振り返る
物の整理・財産の整理を行うことで今の自分に必要なものを考えるきっかけになります。今の自分に必要なものを考える過程では引きずっている過去のことや、今抱えている「やり残し」に気付くことができる良い機会になります。
これからの人生をどう生きてくのかを考える良い機会と捉えると生前整理は縁起の悪いものではなく、とても前向きなものになります。
生前整理のメリット
生前整理が必要な理由について解説しましたが、生前整理を行うと次のようなメリットがあります。
老後のやりがい
定年退職を迎え、「自由に生きれる!やりたいことができる!」と考える60代は多いでしょう。
しかし、毎日夏休み状態は10ヶ月で「暇・退屈」と感じるようになるというイギリスの金融機関のデータがあります。特に今まで仕事に情熱を注いできた人達は、定年退職後は何か別のやりがい・生きがいが必要です。
生前整理が生きがいに繋がるのかと問われれば、生前整理自体はある程度の期間で終わってしまうのでやりがいはあっても、生きがいには繋がらないかもしれません。しかし、生前整理を通じて不用品販売の楽しみを知ったり、人生を振り返ることで今後の人生のいきがいになる何かをみつけることができるのではないでしょうか。
考えが前向きになる
居住空間がスッキリすれば、気分もスッキリするのと同時に思考もクリアになりやすいでしょう。また面倒だと思っていた生前整理を行えたことが自信につながり、物事を前向きに考えることができるようになるのもメリットです。
相続トラブルを避ける
エンディングノートを作成したり、遺言書を作成することは相続人にとってかなり助かることです。
逆に遺言書がなく、実家不動産をめぐり兄弟間で争いになっているケースを私は多く目にしましたし、相談も受けました。
仲の悪くなかった兄弟が自分の相続のせいで裁判沙汰になるなんて、すごく悲しいことですよね。そういったトラブルを防げるのも生前整理を行うメリットです。
部屋がすっきりする
生前整理は不要な物の処分を行うため、部屋全体がスッキリします。物が減ることで使いたい物が見つからないなどのストレスも減り気分もスッキリしますね。
家族の負担軽減
生前整理を行っておくと、万が一の事態になったときに家族の負担が減ります。遺品整理で困ってしまった点についてのアンケート結果上位2位はつぎのとおりです。
- 整理する物が大量
- 残すか処分かの判断がしづらい
万一の時のため
万が一急に入院する事態になったときに、保険証の保管場所がわからなかったり、預金を下ろすパスワードがわからない等困ってしまうことが起こります。生前整理をしながら必要な情報を家族に残すことは、万一の時に役立ちます。
生前整理の始め方は?
それでは実際に生前整理のやり方を確認していきましょう。大切なことは一気にやりすぎないこと。1日3時間程度と決めて生前整理を行っていきましょう。
物の仕分けをする
まず物を残す物と処分する物に分けましょう。どちらにも分けられないものは保留としておきます。処分する物についても、売る物と捨てる物に分けておきます。
この時のポイントはルールを作って仕分けを行うことです。たとえば、次のようなルールを自分で決めてみてはいかがでしょうか。
- ワンシーズン着なかった洋服は処分する
- 2度読まなかった本は処分する
- しまい込んでいたもらい物は処分する
この様にルールを決めて物を仕分けます。処分すると決めた物は必ず次のゴミの回収日に捨てるようにしましょう。ゴミ袋に入れたまま放置することのないようにしましょう。
財産目録作成
不動産や現預金などのプラスの財産と、借金などのマイナスの財産を一目で把握できるようにリスト化します。これを財産目録と呼びます。
万が一相続が発生した際に、相続人は3ヶ月という比較的短期間のうちに相続放棄を検討しなくてはならず、財産目録があると大変助かるものです。財産目録は裁判所のホームページにわかりやすいひな形が用意されています。この機会に財産目録を作成してみましょう。
裁判所HP:財産目録のひな形
不要な口座 カード解約
使っていない銀行口座やクレジットカードなどは解約しましょう。解約したクレジットカードはカード会社の指示に従い、ハサミなどで切り破棄しましょう。
貴重品をまとめる
保険証書や契約書関係、預金通帳や不動産の権利証はまとめて保管しましょう。万が一の事態に家族が見つけやすくなります。
- 通帳
- 年金手帳
- 株式や債券などの有価証券に関する書類
- 不動産の権利証や売買契約書、領収書
- ローンの契約書等
- 印鑑
- カード
- 公共料金に関する書類
定額サービスの選択・整理
何気なく加入してしまい、そのままになっている不要な定額サービスがないか、この機会に調べてみましょう。ひとつひとつのサービスは低額でも、塵も積もれば・・です。
亡くなった後に、相続人が定額サービスを見つけ出し解約するのはかなり大変です。解約せずに利用するサービスはログイン情報等をエンディングノートに記録しましょう。
SNSのアカウント
長期間つかわれていないSNSアカウントは、悪用されてしまうリスクがあります。なりすまし投稿や、詐欺に利用されてしまう可能性もあるため、今使っていないのであれば、アカウントの削除を行ってしまいましょう。
もし現在使用しているのであれば、家族がアカウント削除等のリクエストを行えるようにログインID等の情報をエンディングノートに記録しておくことが大切です。
Facebooknoの終活
Facebookは自分の死後「追悼アカウントに切り替える」または「アカウントを削除する」方法を選べます。追悼アカウントに切り替える場合は、追悼アカウント管理人をあらかじめ決めておくようにしましょう。管理人は、友達リクエストの承認や写真の変更を行うことができます。
また他のSNSと違い、Facebookは生前に「自分が死んだらアカウントを削除する」という指示を出しておくことが可能です。
参照:私が死亡した場合、Facebookアカウントはどうなりますか。|Facebook
Instagramの終活
InstagramもFacebookと同様に「追悼アカウントに切り替える」または「アカウントを削除」を選べます。追悼アカウントへ切り替わるとアカウントは凍結されますが、写真や投稿は残ります。ただし追悼アカウント管理人を指定する制度はありません。
参照:亡くなった方のInstagramアカウントを報告するにはどうすればよいですか。|Instagramヘルプセンター
Twitterの終活
Twitterはユーザーが死亡した場合には、アカウントを停止します。権限のある遺産管理人や故人の家族がアカウント停止のリクエストを行うことでアカウントは停止されます。
参照:ユーザーが亡くなられた場合|Twitterヘルプセンター
LINEの終活
LINEのアカウントは、故人の家族よりアカウント削除のリクエストをすることでアカウントが削除されます。アカウントを引き継ぐことはできません。ただし、携帯電話を解約すればLINEのアカウントも削除されることになるため、携帯電話を解約する予定であればアカウント削除は必須ではありません。
参照:故人のアカウントを閉鎖する|LINEセーフティーセンター
デジタル遺品の処理
デジタル遺品とは、故人が生前に残したデジタル機器やそこで利用されたデータを意味します。
特に現代はスマホを利用した株取引やFX取引、ネット銀行を利用している人は多く、もしもログイン情報がわからないと、相続人としてはお手上げ状態になってしまうものです。
ネット銀行のアカウントに気がつかず、相続発生から10年が経過してしまえば、ネット銀行にある故人の預貯金は請求できなくなる恐れがあります。預貯金や株式などの有価証券は相続税に関連するもののため、相続税の申告期限が過ぎた後に財産が発見された場合には、ペナルティとして余計な税金がかかるリスクもあるため、適切な生前整理が必須です。
デジタル機器のロック解除
残された家族がスマホ等デジタル機器のロック解除をスムーズに行えるようにパスワードを書面で残しておきましょう。ただし持ち歩く手帳などではなくエンディングノート等自宅に保管するものに記入することが重要です。
私の知り合いのおばあちゃんは、銀行のキャッシュカードの暗証番号を手帳に羅列していましたが、認知症になった後もその手帳持参でATMコーナーに行き、親切そうなふりをした男の人にお金をだまし取らてしまったようでした。今はそんな馬鹿なと思っていても認知症になるとその判断ができないものなので注意をしてください。
遺言書やエンディングノートを書く
一時期はやったエンディングノートですが、あまり普及していかないのは、記入するのに意外と労力がかかること、自分が死ぬときのことなど考えたくないといった気持ちの面も影響しているのでしょう。
しかし、エンディングノートひとつで相続人の争いを避けることもできますし、大切に残してほしいものも間違いなく引き継げます。一度書いておけば、当分書き直す必要もないので、ここは気合いをいれて書いておきましょう。
おすすめのエンディングノートを数種類、紹介しますが大阪法務局・司法書士会提供の無料のエンディングノートでも充分でしょう。ぜひプリントアウトして書いてみてくださいね。
大阪法務局・大阪司法書士会から無料のエンディングノート提供(無料)
父よ!母よ!これだけは書き残してくれノート
一般社団法人 終活協議会 はじめの一冊 オリジナルエンディングノート
生前整理のコツは?
生前整理を初めて見たものの途中で挫折する方も残念ながらおられます。というのも、全てを完璧に行うのはそもそも労力がかかりすぎるのです。次の点に注意しながら生前整理を行っていきましょう。
- まずは、1日3時間までと決めて行いましょう
- 思い出に浸りすぎない
- 不要な物を処分することに注力しましょう
- 処分する物は直近のゴミ回収の日に捨てましょう
一気に荷物を整理しようと物を押し入れなどから全て出してしまうと、収拾がつかなくなります。エリアごとに小分けに行っていくことが大切です。
生前整理は自力で?業者に依頼?
生前整理は体力的に負担がかかります。特に押し入れの天袋や、棚の上の物などを取ろうとしてケガをしては大変です。子ども達に手伝ってもらう、業者に依頼することも検討しましょう。
親が生前整理に前向きになっている場合は、親の生前整理の手伝いを申出ましょう。親がせっかくやる気になっているのに、自分が手伝うことができない場合には、母の日や父の日、敬老の日などに絡めて生前整理のプレゼントをするのはいかがでしょうか。
生前整理業者を利用した方の声
確かに5万円でここまでやって頂ければ御の字ですよね!
親に生前整理をしてもらう方法
親に万が一のことがあった場合、最終的に親の家を整理するのは子ども達です。できれば生前に物の整理まで行ってもらいたいですよね。しかし、無理矢理生前整理をさせるわけにもいきませんし、ケンカになってしまうのも避けたいですよね。そこで生前整理を気持ちよくしてもらえるような方法を紹介します。
定年後のやりがいになるよう仕組み作り
特に今まで仕事一筋で生きてきた男性は、退職してしまうと「やりがい・生きがい」を感じられず、張り合いがなくなってしまうことが少なくないようです。
そこで、不用品を自宅にいながら売却できるフリマアプリを紹介し、収入を得られる楽しさを体験してもらいましょう。「みんなのメルカリ教室」では高齢者向けに、オフラインでメルカリ出品のやり方を教える取り組みを行っています。完全無料でメルカリの使い方をマスターできますよ。
大きな売り上げが上がらずとも、不要なモノがお金に変わる体験は、一度経験するとはまってしまう人もいるのではないでしょうか。特に男性は凝り性な面を持つ人も多いです。本気で取り組めば、老後の収入確保につながる可能性もありますよね。
生前整理は皆やっていると伝える
生前整理をおすすめするときには「他の人もみなやっていることだ」と言うことを伝えてみましょう。実は日本人は「皆やっている」「皆~」というセリフにとても弱いということは有名ですね。ダメモトで「普通にみな生前整理なんてやっているよ〜」と伝えてみましょう。
まずは自分がやってみる
物を捨てることに強い抵抗がある場合(結構な割合でそうだと思いますが)、言葉で伝えても、まず物を処分してもらえないでしょう。その場合には、実家の元自分の部屋の整理を行いましょう。
スッキリとした子供部屋を見れば、整理も悪くないなと実感してもらえる可能性は高まります。同時に、親がなぜ物を捨てられないのかを体感できるかもしれません。喧嘩になるまで説得しようとせずに、スッキリ!を体感してもらうようにしましょう。
一緒に整理を手伝うことをアピール
整理整頓はいざ行おうと思うと面倒だし、腰が重い人も少なくないでしょう。でも子どもも一緒に手伝ってもらえるなら「やってもいいかな」と思ってくれる人もいるでしょう。
思い出話ばかりで進まず、うんざりするかもしれません。しかし、話を聞くのも「親孝行のひとつ」と捉え、積極的にコミュニケーションをとりつつ生前整理を手伝いましょう。
生前整理と老前整理の違いは?
老前整理という言葉を聞いたことがありますか?生前整理と似た言葉ですが、意味は微妙に異なるようです。ここで生前整理と老前整理の違いについて整理します。
生前整理 | 自分の死後にトラブルが起きぬよう、死後の家族の負担減のため行う物と財産の整理 |
老前整理 | 老後を快適に過ごせるように、物を減らすこと |
恐らく、生前整理という言葉が縁起が悪く聞こえてしまうため老前整理という言葉が生まれたのではないかと思います。どちらも実質行う内容に違いはありません。
まとめ
生前整理のはじめ時は、特に決まりはないものです。ただし、本記事に記載したように、健康年齢が70代前半であることを前提にすれば、定年退職を迎えるあたりに生前整理をスタートするのがよいでしょう。
物があふれる家では転倒事故が容易におこります。長い時間を過ごす家の中を少しでも快適に過ごせるように、整理をしていきましょう。
思い出の物を処分するのは、簡単ではありませんが、他に大切にしてくれる人がいれば譲っていいかなと思いませんか?ぜひ老後の楽しみのひとつに、今回ご紹介した「メルカリ教室」を取り入れてみてくださいね。
親御さんが生前整理に積極的でないようなら、ぜひメルカリ教室に一緒に参加してみてください。片付けより先に「不用品売却の楽しさ」を知れば、結果ものの整理も進むかもしれません。多くはないかもしれませんが、収益もでるのでやりがいを感じてもらえるかもしれません。
紹介したようなエンディングノートの活用、不用品の売却などを取り入れ、義務ではなく、楽しみとしてできるような仕組みを一緒に考えてみてはいかがでしょうか。