【相続の基礎知識を徹底解説】相続人と被相続人の違いとは?

話し合う家族

すべての人間が避けて通れないことの一つに死があります。「人が亡くなる=相続が発生」するということであるため、相続はいずれ誰もが経験します。身近な親族の相続は心身共にダメージも大きく、その状況で的確な判断をしなくてはなりません。

ですが、今のうちから相続の基礎知識を得ることで、将来必ず起こる相続に関してのトラブル、不安を減らすことは可能です。加えて、知っておいて損のない相続の基礎知識、むしろ知らないと損をしてしまうこともあります。

しかし厄介なことに、法律や税制は年々変化するものです。そこで、元司法書士の筆者が、法律のアップデートを踏まえて、相続の基礎知識を分かりやすく解説します。

目次

相続とは?わかりやすく解説

相続とは、人が亡くなり、その亡くなった人の遺産(権利と義務)を引き継ぐことです。民法で定められた親族(法定相続人)への相続の他に、遺言で法定相続人以外に引き継ぐ遺贈があります。

現代は家族の形は多様化しており、それに伴い相続時の権利関係も複雑化し、トラブルに発展することも少なくありません。相続の基礎知識を知り、生前に対策をすることがますます重要になってきています。

相続人と被相続人とは?

相続の場面での登場人には、被相続人と相続人がいます。

被相続人とは、亡くなった人のことを指します。相続人はご存知のとおり、被相続人の遺産を引き継ぐ人を指します。

相続人は、民法でその範囲が定められており「法定相続人」と呼ぶことが特徴です。遺言で法定相続人以外の人に相続をすることもできるのが遺贈です。遺贈を受ける人を「受遺者」と呼びます。

相続の対象となる財産とならない財産がある?

悩む家族

一言で相続財産といっても、実は相続の対象になる財産と、対象にならない財産があることを知る必要があります。ここからは、相続の対象となる財産や、併せて知るべき「みなし相続財産」について解説します。

相続の対象となる財産は?

相続の対象となる財産は、現金・預貯金をはじめとして、財産的価値のあるものが対象となります。プラスの財産だけで無く、借金や未払いの税金などはマイナスの財産として相続の対象です。

一方で、被相続人だからこそ達成できる権利と義務(一身専属的な権利義務)は相続の対象外です。例えば、親が弁護士資格を持っていたとしても、その子供が相続により弁護士になれるかと言えば、イメージがつくでしょうか。

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相続の対象の
財産
【プラスの財産】
土地、建物、設備等
土地のうえに存在する権利(借地権、借家権、定期借地権、地上権等)
預金、現金、貸金庫の中にある財産
有価証券(上場株式、非上場株式、国債、地方債、社債、投資信託、不動産投資信託等)
動産(自動車、船舶、骨董品、宝石や貴金属等)
債権(貸付金の債権、損害賠償請求権、慰謝料請求権、報酬債権等)
知的財産権(特許権、商標権等)
会員権等(ゴルフ会員権、リゾート会員権)
【マイナスの財産】
借入金(住宅ローン、車のローン、クレジットの残債等)
税金(所得税、住民税、国民健康保険料、固定資産税、贈与税等~
未払い債務(水道光熱費、高齢者施設の利用料、医療費、家賃等)
預り金(オーナーとして預かっていた敷金、保証金等)
事業を行っていた場合の買掛金、前受金、所得税、消費税等
相続の対象外の
財産
一身専属権(国家資格、親権、生活保護給付の受給権者の地位、養育費等)
葬儀費用、香典、慰労金
墓地、墓石、仏壇、神具、神棚、位碑
被相続人以外を受取人と指定している死亡保険金
受取人を指定している死亡退職金

※民法上は相続の対象外の財産であっても、税法上はみなし相続財産とし課税対象になるものがあります。

みなし相続財産とは?

みなし相続財産は、被相続人が亡くなったことで、初めて取得する財産を指します。

具体的な例として死亡退職金、死亡保険金がみなし相続財産です。

みなし相続財産は、本来は相続財産ではありませんが、税法上は相続財産とみなされ、相続税の課税対象となる財産です。

遺言が存在しない場合、一般的には法定相続人全員で、遺産の分配内容を協議し、誰が何をどれだけ引き継ぐのかを決定します。これを遺産分割協議と呼びますが、みなし相続財産は遺産分割協議の対象外です。

そもそも受取人が指定されているのが、みなし相続財産なので、協議をする余地がありません。

みなし相続財産は相続放棄をしても受け取り可能

みなし相続財産は、相続放棄をしても受け取ることができます。

本来は相続財産ではなく、受取人固有の財産であるからです。ただし、相続放棄をした場合は、次に説明する非課税枠の適用が無いことに注意が必要です。

生命保険金と死亡退職金には非課税枠がある

みなし相続財産の代表例である生命保険金と死亡退職金には、一定の非課税枠の適用があります。この非課税枠を利用し、生命保険を活用した節税対策はご存じの方も多いのではないでしょうか。

生命保険金と死亡退職金の非課税枠計算式:500万円×法定相続人の数

具体例

被相続人Bの死亡により職場から1500万円の死亡退職金が支払われた。

法定相続人は妻のAと2人の子供CとDの3名。Dは今回の相続放棄をしている。

死亡退職金の受取人が妻のAと指定されていた場合。

計算:1500万ー(500万×3)=死亡退職金の非課税枠1500万円

この具体例では死亡退職金は非課税枠に収まるため、相続税はかかりません。

受取人が法定相続人の1人(このケースでのA)であったとしても、法定相続人が3名存在すれば「500万×3名分=1500万円」が非課税枠になります。

さらに、Dは相続放棄をしていますが、非課税枠計算の際の法定相続人の人数に含むことができます。

ただし、仮に相続放棄をしているDが死亡退職金の受取人だった場合は非課税枠は適用されないことには注意が必要です。  

相続税の基礎控除とは?

電卓を打つ手

相続税は、相続人が遺産を引き継いだ際に発生し、相続人が納税をします。しかしすべての相続で相続税がかかるわけではありません。相続税は、どのようなときにかかってくるのか確認しましょう。

基礎控除とは?

相続財産が一定の金額以下であれば、相続税は発生しません。この一定の金額が基礎控除です。

相続税の基礎控除計算式:3000万円+(600万×法定相続人の数)=基礎控除の額

基礎控除の額より相続財産が少なければ、相続税の申告は不要で相続税もかかりません。  

具体例

ケース1:遺産総額4500万円、法定相続人の数3名

基礎控除の額:3000万円+(600万×3)=4800万円

遺産総額4500万円より基礎控除の額が大きいですね。

この場合は相続税は発生しません。

ケース2:遺産総額4500万円、法定相続人の数2名

基礎控除の額:3000万円+(600万円×2)=4200万円

遺産総額4500万円は基礎控除の額を300万円超えているため、300万円に対して相続税が発生します。

遺産総額とは何を指すのか

相続税が発生するかは、遺産総額が基礎控除額を超えるか否かがポイントでした。

それでは、遺産総額とは何を指すのでしょうか。相続財産には、プラスの財産とマイナスの財産がありましたね。このプラスの相続財産から、マイナスの相続財産を引いたものが遺産総額です。

遺産総額=プラスの相続財産(含むみなし相続財産)ー非課税財産+相続時精算課税を利用した贈与財産)ー債務・葬式費用+相続開始3年以内の贈与

遺産総額を計算する際は、みなし相続財産である「死亡保険金」と「死亡退職金」を見落とさないように注意しましょう。

配偶者控除などの控除・特例

相続税の基礎控除の他にも、様々な控除や特例があります。一例を挙げます。

  • 配偶者控除
  • 小規模宅地等の特例
  • 死亡保険金控除
  • 死亡退職金控除
  • 暦年課税贈与の控除
  • 相続時精算課税制度の控除  
  • 未成年者控除
  • 障碍者控除
  • 外国税額控除 
  • 相次相続控除

控除や特例は、知らないと損をしてしまうこともあります。自分が活用できる控除や特例が無いか、相続税に強い税理士に相談をしましょう。

なお、相続税に強い税理士は下記の記事にて掲載しています。本記事と併せてご覧ください。

相続税に強い税理士(準備中)

相続人の範囲

家族

相続税の基礎控除額は法定相続人の人数で変わるということをお伝えしました。

それでは、法定相続人には誰がなるのでしょうか。ここでは、法定相続人はどのように決まるのか、法定相続人の相続割合を確認しましょう。

法定相続人と法定相続分

相続人の範囲は民法で定められています。法で定めた相続人なので「法定相続人」です。また、法定相続人が相続する割合を民法で定めたものが法定相続分です。

法定相続人は「配偶者相続人」と「血族相続人」の2種類に分かれます。

血族相続人
  • 直系卑属(子供・孫・ひ孫)
  • 直系卑属(父母・祖父母)
  • 兄弟姉妹・姪甥

法定相続人の順位

法定相続人のうち、配偶者相続人が存在する場合は常に相続人になります。ただし、内縁の妻や夫は法定相続人とはなりません。一方で、血族相続人には順位があります。

血族相続人の順位
  • 第1順位:直系卑属(子供・孫・ひ孫)
  • 第2順位:直系尊属(父母・祖父母・曾祖父母(ひいおじいさん・ひいおばあさん)
  • 第3順位:兄弟姉妹

第1順位:直系卑属(子供・孫・ひ孫)

血族相続人のうち、第1順位は被相続人の子、孫、ひ孫などの直系卑属です。

第1順位の子供が被相続人より先に亡くなっている場合は、第2順位の相続人が法定相続人になるのではなく、子供の子(孫)が法定相続人になります。孫も先に他界している場合は、孫の子(ひ孫)が法定相続人になります。

このように、既に他界している相続人の子(直系卑属)が代わりに法定相続人になることを代襲相続といいます。

直系卑属の代襲相続に際限はありません。なお、ここでいう子とは実子、養子の区別もありませんし、前婚で生まれた子、認知された子も含まれます。

第2順位:直系尊属(父母・祖父母・曾祖父母)

第1順位の直系卑属が存在しない場合には、第2順位の直系尊属が法定相続人になります。

父母が既に他界している場合には、祖父母が法定相続人です。祖父母が既に他界している場合には、曾祖父母が法定相続人になります。

第3順位:兄弟姉妹

第1順位、第2順位の法定相続人が存在しない場合は、被相続人の兄弟姉妹が法定相続人になります。

もし兄弟姉妹が先に他界している場合は、姪甥が代襲相続し法定相続人となります。

第3順位の兄弟姉妹は代襲相続は1度のみ(甥姪まで)、対して第1順位の直系卑属の代襲相続には、際限がない点が異なります。

配偶者相続人は常に相続人になりますが、血族相続人は先順位の法定相続人が存在すれば後順位の人は法定相続人にはなりません。

法定相続人の相続割合は?

法定相続人が相続する割合は、民法の第900条で定められています。

同順位の相続人が数人あるときは、その相続分は、次の各号の定めるところによる。

1.子及び配偶者が相続人であるときは、子の相続分及び配偶者の相続分は、各2分の1とする。

2.配偶者及び直系尊属が相続人であるときは、配偶者の相続分は、3分の2とし、直系尊属の相続分は、3分の1とする。

3.配偶者及び兄弟姉妹が相続人であるときは、配偶者の相続分は、4分の3とし、兄弟姉妹の相続分は、4分の1とする。

4.子、直系尊属又は兄弟姉妹が数人あるときは、各自の相続分は、相等しいものとする。

引用元:e-GOV法令検索 民法第900条

具体例

配偶者と子供が3人の場合
  • 配偶者:1/2
  • 子供:1/6×3名
配偶者が他界しており、子供2人の場合
  • 子供:1/2×2名
配偶者なし、子供なし、父母が存命の場合
  • 父:1/2
  • 母:1/2 
配偶者がおり、子供なし、両親は他界、兄弟1名
  • 配偶者:3/4
  • 兄弟:1/4
配偶者も子供もなし、親は他界 兄弟2名
  • 兄弟:1/2×2名
配偶者あり、子供なし、両親存命
  • 配偶者:2/3
  • 両親:1/6×2名

兄弟姉妹にはない遺留分とは?

遺留分とは、遺贈や不公平な遺言により、遺留分より少ない遺産しか相続できなかった相続人へ、最低限の遺産を保障する権利です。遺留分は配偶者、子供、直系尊属(父母)に認められていますが、兄弟姉妹には遺留分はありません。

それでは、遺留分の認める最低限の遺産の保障とはどの程度でしょうか。

遺留分の割合

遺留分の割合は、相続人が直系尊属(父母・祖父母等)のみの場合は遺産総額の3分の1、そのほかの場合は遺産総額の2分の1です。

各相続人の遺留分は、法定相続分×これらの割合(3分の1または2分の1)で求められます。

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法定相続人遺産総額に対する
遺留分の割合
法定相続分各相続人の遺産総額に
対する遺留分
配偶者
子供1人
1/2配偶者:1/2
子供:1/2
配偶者:1/4
子供:1/4
配偶者
直系尊属(父母)
1/2配偶者:2/3
父:1/6
母:1/6
配偶者:1/3
父:1/12
母:1/12
配偶者
兄弟2名
1/2配偶者:3/4
兄弟1:1/8
兄弟2: 1/8
配偶者:1/2
兄弟1:なし
兄弟2:なし
配偶者のみ1/2全て1/2
子供のみ1/2全て1/2
父母のみ1/3父:1/2
母:1/2
父:1/6
母:1/6
兄弟1人のみなし全てなし

遺留分侵害額請求とは?

遺留分が侵害されていると判明しても、自動的に遺留分を取り戻せるわけではありません。遺留分が侵害されていることを知った日から1年以内に、遺留分侵害額請求という権利を行使する必要があります。

遺留分に関しては期限もあるため、遺留分侵害額請求ができるのか否かの判断や、金額的な事を含めて相続に強い弁護士に相談をしましょう。

なお、相続に強い弁護士は下記の記事に掲載をしています。本記事と併せてご覧ください。

相続に強い弁護士(準備中)

法定相続人でも相続の資格が無い?「相続欠格事由」と「相続廃除」

本来、相続権がある人でも相続人になれないケースがあります。それが、相続欠格と相続廃除です。

相続欠格は、規定された5つの事由に相当すれば、何ら手続きをせずとも即時、相続権は失われます。そして、失われた相続権は二度と戻ってきません。

他方で、相続廃除は被相続人の意思によって相続権を失わせる制度です。そのため相続廃除は裁判所を通して相続廃除の取消しもできます。

相続欠格になる5つの事由とは?

相続欠格は、民法第891条に、5つの欠格事由が定められています。

1.故意に被相続人又は相続について先順位若しくは同順位にある者を死亡するに至らせ、又は至らせようとしたために、刑に処せられた者  

2.被相続人が殺害されたことを知って、これを告発せず、又は告訴しなかった者。ただし、その者に是非の弁別がないとき、又は殺害者が自己の配偶者若しくは直系血族であったときは、この限りでない。

3.詐欺又は強迫によって、被相続人が相続に関する遺言をし、撤回し、取り消し、又は変更することを妨げた者

4.詐欺又は強迫によって、被相続人に相続に関する遺言をさせ、撤回させ、取り消させ、又は変更させた者

5.相続に関する被相続人の遺言書を偽造し、変造し、破棄し、又は隠匿した者

引用元:e-GOV法令検索 民法第891条

要約すれば、自分が遺産を相続したいあまりに他の相続人を殺そうとしたり、実際に殺してしまったりした場合、不利になる遺言を詐欺や脅迫でもみ消し、変更させる、自分に有利な遺言を無理矢理書かせたり騙して書かせたりすると当然に欠格事由に該当するということです。

なお相続廃除をされた者に子供がいる場合は、その子供が代襲相続をし相続人となります。

遺留分のある相続人のみに適用される相続廃除制度

被相続人は、相続人(遺留分のない兄弟姉妹を除く)が下記の様なことを行った場合は、裁判所にその相続人の廃除を請求することができます。

  • 生前に被相続人へ虐待・侮辱を行った
  • 相続人自身が著しい非行行為があった

相続の選択方式は3種類

書類に記入する手元

相続が開始し、相続人になった場合、必ず相続財産を引き継がなくてなならないのでしょうか。

もちろん、そのような決まりはありません。相続人は、その相続を承認するか否か、選択をすることが可能です。

ここでは、相続の3種類の選択方式、「単純承認」「限定承認」「相続放棄」を解説します。

相続は承認するか、放棄するかの選択ができる

遺産相続と聞くと、プラスの財産を引き継ぐことをイメージしがちです。実際は、マイナスの財産も相続財産に含まれることから、相続を承認するのか、相続をせず放棄をするのか選択ができます。

相続を承認する場合は単純承認と限定承認がある

相続することを承認する場合は、単純承認と限定承認があります。

  • 単純承認:プラスの財産もマイナスの財産も丸ごと相続する
  • 限定承認:プラスの財産の範囲内でマイナスの財産を相続する

単純承認は、特に手続きをせずとも、相続の開始を知ったときより3ヶ月を経過することで、単純相続したとみなされます。一度、単純承認をすると、相続放棄ができなくなるので注意しましょう。

また、つぎの行為を行った場合には、相続人の意思に関係なく、限定承認を行ったものとみなされる(法定単純承認)ため、注意が必要です。

限定承認を行ったものとみなされる要件は、民法第921条に定められています。

e-GOV 法令検索 民法第921条

民法第921条には、相続財産の処分行為は単純承諾したとみなされるとあります。

単純承諾したとみなされる例
  • 相続財産の金銭を私的に利用した場合
  • 相続財産である建物(家屋)を取り壊した場合

一方で、相続財産である家屋の修繕をすることは、保存行為にあたり、単純承諾したとみなされることは、ありません。

この辺りの線引きは、微妙でわかりにくく、何がセーフで何がアウトか、迷われるでしょう。

もしも、相続放棄を考慮されているのであれば、相続財産にはできる限り触れずにいるのが得策です。必要に迫られ、相続財産に関連した行為をする場合は、事前に相続に強い弁護士、司法書士などに相談をしましょう。

単純承認が全ての財産をまるごと相続するのに対し、限定承認はプラスの財産の範囲でのみ、マイナスの財産を引継ぎます。

相続開始を知ったときから3ヶ月以内に、相続人全員で、限定承認の申述をしなくてなりません。限定承認は、相続人の誰か1人でも、同意をしない場合は、限定承認を選択することはできません。

相続は承認せず放棄もできる

借金などのマイナスの遺産が多く、相続をしたくない場合は相続放棄ができます。

相続放棄は、プラスもマイナスもすべての相続財産を引き継がない方法です。

相続放棄をする場合は、相続開始を知った日から3ヶ月以内に家庭裁判所への申述をします。各相続人が、個別に判断、申述ができる点も限定承認とは異なります。

放棄をする際の注意点

相続を放棄する場合は、相続人が変わってしまう場合があるため注意が必要です。

相続放棄をするとその相続に関して、初めから相続人で無かったとみなされます。そのため、相続放棄をした人と同順位の相続人がいない場合は、元々相続人で無かった親族が相続人になることがあります。

なお、遺産分割協議時に遺産を引き継がないことを相続放棄と思っている方もいますが、それは本来の相続放棄ではありません。負の遺産を相続したくない場合は、相続放棄を検討しましょう。

具体例

「多額の借金を残してAが他界。法定相続人は妻のBと子のC。Aの両親は健在」というパターンで説明します。

亡くなったAには多額の借金以外の財産が無かったため、法定相続人だったBとCは相続放棄をし、借金返済の義務は無くなりました。

B、Cが相続放棄をしたため、Aの両親が民法の定められた順位により相続人となります。

Aの両親が借金のことを知らなかった場合、相続放棄のことを知らなかった場合など、3ヶ月の期限を過ぎAの相続を単純承認をしたものとみなされてしまうと、Aの両親が多額の借金を負うことになってしまいます。

このような事態にならないように、相続放棄をする場合には事前に親族に説明をすることが重要です。マイナスの財産が多く相続放棄をしようと考える場合は、弁護士、司法書士などの専門家に相談することをおすすめします。

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メリットデメリット手続き
単純承認・各相続人が個別判断できる
・承認に特段の手続き不要
・後々判明した借金等も相続対象になる不要
限定承認・プラス遺産の範囲内でマイナス遺産を負担すれば良い
・相続放棄と異なり、後に発見されたプラスの遺産も相続できる
相続人全員で期限内に限定承認する必要がある
・精算手続きが煩雑
・譲渡所得税がかかる
相続開始を知った日より3ヶ月以内に相続人全員で家庭裁判所へ申立て
相続放棄・マイナス遺産を引き継がなくて済む
・借金を弁済する必要が無い
・各相続人が個別判断できる
相続権が移ることがあり親族に影響がある
・みなし相続財産の非課税枠を使えない
相続開始を知った日より3ヶ月以内に家庭裁判所へ申立て

相続財産の分配方法は3種類、優先順位はある?

遺言書

相続した財産は、どのような方法で分配していくのでしょうか。相続財産の分配方法には次の3つがあります。

  • 遺言書による分配
  • 遺産分割協議書による分配
  • 法定相続分による分配

原則、遺言書が遺されている場合には、他の方法に優先しますが、例外もあります。ここからは、3つの相続財産の分配方法と、それぞれの注意点について解説します。

遺言書による相続

被相続人が遺言書を遺していた場合には、原則遺言書の内容に沿って遺産を承継させます。遺言により第三者に対して遺産を遺贈、寄付することもできます。

遺言書がある場合は法定相続分に優先されますが、遺言書があっても次の要件を満たせば、遺産分割協議で遺産を分割することも可能です。

  • 遺言で遺産分割協議が禁止されていないこと
  • 相続人全員(遺言による第三者の受遺者がいれば第三者受遺者も)が合意していること
  • 遺言執行者がいる場合は同意していること

法定相続分通りに相続

民法で定められた法定相続分で遺産を引き継ぎます。ただし、遺産に不動産が含まれる場合、法定相続によって分割すると不動産は共有状態になります。

のちに不動産を売却するタイミングでトラブルになることも多いため、慎重に検討しましょう。

遺産分割協議による相続

遺言書が無い場合、遺産を誰に何をどのくらい分けるかという話し合い、遺産分割協議を行います。

遺産分割協議では、先にふれた法定相続分とは異なる割合を決めることも可能です。相続人全員の参加が必要で、誰か1人でも参加をしなかった場合はその協議は無効となるので注意しましょう。

注意が必要な遺産分割協議

相続人の中に未成年者がいる場合

相続人の中に未成年者がいる場合は注意が必要です。

未成年者が法律行為をする場合は、親権者が代理人として法律行為を代理します。遺産分割協議に関しても 親が代理人となれるのでしょうか?

結論としては、親権者が相続人として遺産分割協議に参加する場合は未成年者の代理人にはなれません。利益相反の観点から、親が遺産分割協議に相続人として参加する場合は、未成年者のために裁判所を通して特別代理人を選任する必要があります。

逆に、親が遺産分割協議に参加しない場合には、代理人として未成年のために遺産分割協議に参加することは可能です。

相続人の中に認知症の方がいる場合

次に、相続人の中に認知症の方がいる場合です。

認知症の方は遺産分割協議において、適切な判断ができないため、ご本人に代わり「成年後見人」に参加してもらう必要があります。

成年後見制度とは、簡単にいうと認知症や、障害で判断能力が不十分な方の権利を守るための制度です。家庭裁判所によって選ばれた成年後見人は、被後見人(判断能力が不十分な方)に不利益がないよう、法的に保護・支援します。

成年後見人は、弁護士や司法書士など、専門家がなることが多いです。しかし、親族の方も選任されれば、成年後見人になれます。ただし、選任は家庭裁判所が決めることのため、必ず成年後見人になれるとは限りません。

いずれにしても、成年後見制度を利用する際は、家庭裁判所へ成年後見の申立をし、成年後見人を選任してもらう必要があるのです。

成年後見人が選任されるまで、少なくとも、1ヶ月程度はかかります。相続人の中に、認知症の方がいる場合は、早めに手続きを進めましょう。

このようにして選任された成年後見人が、認知症の方に代わり、遺産分割協議に参加しますが、その協議内容に関して家庭裁判所の関与が発生します。成年後見制度は、被後見人の権利を守る制度であるため、被後見人(認知症の方)の相続分が、法定相続分を下回るような協議内容は認められないと考えておきましょう。

成年後見制度は、判断能力が不十分な方を保護・支援する制度のため、遺産分割が終わったとしても、被後見人が死亡するまで、終了することはできない点は覚えておきましょう。

遺産分割協議がまとまらない場合は遺産分割調停、遺産分割審判

遺産分割がまとまらず、相続トラブルになってしまった場合は、家庭裁判所により選任された調停委員に間に入ってもらい、遺産分割の内容を決める遺産分割調停を行います。

それでもまとまらない場合は、裁判官が一切の事情を考慮して審判をします。このような相続争いが起こらぬよう、事前に遺言書を作成するなど、相続対策が重要なのです。

相続手続き全体の流れ

相続手続き

相続の事務手続きは細かなものを入れると、120種類近くになると言われています。相続の事務手続きのイメージを持っていただくため、おおまかな流れを解説します。死後の手続きの詳細をすぐに知りたい方はリンク先をご覧ください。

死亡診断書又は死体検案書の受取と死亡届の提出

病院で亡くなった場合は死亡診断書、自宅で亡くなった場合や事故で亡くなった場合は警察から死体検案書を受け取る。これらの書類は次に説明する役所での死亡届提出時に必要になります。

死亡届の提出と火葬許可証の取得

死亡の事実を知った日から、7日以内に被相続人の住所地の市区町村役場に死亡届を提出します。死亡届提出のタイミングで火葬許可証を取得する必要があるため、死亡届の提出は葬儀社が代行してくれることが多いでしょう。

公的年金・健康保険の手続き

亡くなった方の住所地の役所や年金事務所で、健康保険脱退、世帯主の変更手続き等を行う。

死亡保険金の請求手続き

死亡保険金の受取人から保険会社に連絡を入れ、死亡保険金の請求手続きを行います。手続きには病院から発行される死亡診断書、または警察から発行される死体検案書が必要です。

公共料金等の引き落とし口座の変更等

なるべく早いタイミングで公共料金の引き落とし口座の変更、サブスクリプション契約などの変更、解約を行う。

相続人の確定・戸籍謄本等の取得

亡くなった方の本籍地の役所に対し、生まれてから亡くなるまでの全ての戸籍、除籍、改正原戸籍を請求し取得する。取得した戸籍内容を確認し、相続人を確定する。

法定相続情報を取得する

すべての戸籍等を取得し、相続人を確定させたのちに余裕があれば、法務局で法定相続情報を取得すると後々の手続き時に便利です。(戸籍謄本を複数毎取得する必要が無くなります)

遺言書の有無の確認

自筆証書遺言や、公正証書遺言が遺されていないかを調べます。公正証書遺言は遺言書検索システムがあり、全国どこの公証役場での公正証書遺言の存在の有無を確認できます。自筆証書遺言は自宅で発見する他、法務局の保管管理制度を利用していないか、念のため確認をしましょう。

自筆証書遺言の検認手続き

自筆証書遺言が発見された場合は、直ちに家庭裁判所へ「検認」の申立てをします。なお、勝手に中身を見てしまわないように注意しましょう。

申し立てをする場所は、亡くなった方の最後の住所地を管轄する家庭裁判所です。また、2020年7月にスタートした法務局の自筆証書遺言保管制度を利用していた場合は「検認」の手続きは不要です。

相続財産の調査、把握

預貯金、有価証券、不動産、会員権、第三者への貸付金、高価な骨董品等のプラスの財産と借金、税金、未払いの費用などのマイナスの財産を調査する。

郵便物などから借金が判明することもあるので、郵便物にも注意を払ってください。

相続放棄・限定承認・単純承認の選択

相続財産の把握をした上で、負債が財産を上回るような場合は、相続の放棄も検討する。相続の放棄、限定承認は、相続があったことを知った日から3か月以内に手続きが必要なので注意しましょう。

被相続人の所得税の申告・納付(準確定申告)

亡くなった方が、生前に給与所得以外に年間20万円以上の不動産収入があった場合や、個人事業主として事業をしていた場合などは、準確定申告が必要になります。亡くなられた日の翌日から4ヶ月以内に、相続人が被相続人の確定申告をします。

遺産分割協議の実施(遺言書がない場合)

遺言書が無く、法定相続分と異なる割合で遺産を分割する場合は相続人全員で遺産分割協議を行う。

遺産分割協議の際の特別代理人の選任

相続人の中に未成年者がいる場合に、その法定代理人(通常は父・母)も相続人として遺産分割協議に参加する場合は、お互いの利益が相反する可能性があります。そのため、家庭裁判所を通して特別代理人を選任をしなくては遺産分割協議が開けません。

同様に相続人の中に行方不明者がいる場合も不在者財産管理人という代理人を選任してもらう必要があります。

遺産分割協議書の作成(遺言書がない場合)

遺言書が遺されていない場合には、相続人全員で遺産分割協議を開きます。協議内容は遺産分割協議書にまとめます。 

預貯金・有価証券等の解約や名義変更・換金

遺産分割協議書又は遺言書、すべての戸籍謄本(又は法定相続情報)、相続人の印鑑証明書等必要書類を用意し、銀行、証券会社での預貯金、有価証券の払い戻し、名義変更を進める。

不動産の所有権移転登記 

遺産に不動産がある場合は、法務局に相続登記を申請し名義を変更する。

各種名義変更や解約

自動車、各種会員権の名義変更、クレジットカードの解約などを行う。

相続税の申告・納付

遺産が一定額を上回り相続税の申告・納付が必要な場合は相続開始を知った翌日から10ヶ月以内に相続税の申告・納付。

遺された不動産の相続はどうする?

不動産の相続

不動産が相続財産に含まれることは多く、筆者も沢山の不動産の相続に関する相談を受けてきました。

不動産の相続は、現預金のように簡単、均等に分けることができません。そのうえ、不動産の評価基準は、複数あるため複雑で、相続人間の認識の違いも生まれやすいのです。

話し合いがもつれると、解決までに想像以上の時間がかかってしまうことも少なくありません。

  • 相続不動産を残すか、売却かでもめる
  • 売却する場合の売出し価格でもめる
  • 不動産の分け方についてもめる
  • 売却益の分配でもめる

このようなトラブルが起きぬよう、ここからは、相続不動産の手続きの流れや、分割方法、注意すべき点を解説します。

不動産の相続手続きの流れ

相続財産に不動産が含まれる場合も、前述した相続の流れと、大きな違いはありません。

しかし、不動産の相続は、現預金のように簡単、均等に分けることができないため、分割方法についても解説します。不動産を、相続した際の流れを確認しましょう。

不動産相続の流れ
  • 相続人の確定(戸籍謄本等の取得)
  • 遺言書の有無の確認
  • 遺産を洗い出し、単純承認、限定承認、相続放棄を検討
  • 遺言書が遺されていた場合:遺言書の内容に従って不動産を相続
  • 遺言書が存在しない場合:遺産分割協議による相続を検討
  • 法務局への相続の登記申請準備(必要書類取得・遺産分割協議作成)

①相続人の確定(戸籍謄本等の取得)

相続人の確定および戸籍謄本等の取得を行います。

②遺言書の有無の確認

遺言書の有無を確認します。

③遺産を洗い出し、単純承認、限定承認、相続放棄を検討

相続放棄を行う場合は相続開始を知った日より3ヶ月以内に申述が必要です。

④遺言書が遺されていた場合

遺言書の内容に従って不動産を相続させます。遺された遺言書が自筆証書遺言や秘密証書遺言の場合は、家庭裁判所での「検認」手続きを行わなければ、相続の登記はできません。

検認の目的
  • 相続人に遺言書の存在や内容を知らせる
  • 検認日における遺言内容を明確にすることで、後日遺言が偽造、変造されることを防止する

※2020年より創設された法務局での自筆証書遺言保管制度を利用した場合は、自筆証書遺言であっても、家庭裁判所での検認手続きは不要です。

⑤遺言書が存在しない場合

遺言書がない場合には、遺産分割協議書を行います。

遺産分割協議書をせずに、法定相続分通りに相続することも可能です。しかし法定相続分で相続した場合、不動産は共有状態になります。

一見、分割の協議をする必要もなく、法定相続分で共有にすることは、良さそうに思えるかもしれません。しかし、不動産の共有はトラブルに発展する要素が満載です。

不動産の共有の代表的なデメリット
  • 共有不動産を売却する際は、共有者全員の同意が必要
  • 共有不動産売却時の登記手続きにも、共有者全員の関与が必要
  • 当初は納得して相続不動産を共有にしたものの、年月の経過により、各共有者の経済状況、家庭環境も変化し、不満やトラブルが発生することがある
  • 共有者が亡くなった場合、疎遠な人と共有関係になることがある

以上のデメリットがあるため、特別な事情がない限りは、遺産分割協議を行うことをおすすめします。

不動産の共有は将来的にトラブルが起こりやすいということならば、遺産分割協議で、どのように分ければ良いのでしょうか。不動産の分割方法には、以下の方法があります。

1.代償分割

特定の相続人が不動産を丸ごと相続する代わりに、他の相続人に現金などを支払う方法です。

不動産を引き継ぐ相続人は、自己の法定相続分を超える部分について、代償として自己資金から他の相続人へ現金等を支払います。そのため、不動産を引き継ぐ相続人には資金力が求められます。

2.換価分割

相続する不動産を売却し、売買代金として得た現金を相続人で分ける方法です。相続不動産を売却するには、前提として被相続人名義の不動産を特定の代表相続人または相続人全員の名義に変更してから売却をします。

3.現物分割

相続する不動産を特定の相続人1人が単独で相続する方法です。他の相続人は不動産以外の現金等を不動産の代わりに相続します。現物分割をするためには、不動産以外の預金、現金、有価証券などの相続財産があることが前提になります。

この3つの分割方法の中から、状況に応じた分割方法を選択し、遺産分割協議にて不動産を引き継ぐ人を決めます。

⑥法務局への相続の登記申請準備(必要書類取得・遺産分割協議作成)

遺言書がある場合、遺産分割協議が整った場合、または法定相続分で相続すると決まった後には、被相続人名義から相続人への所有権移転の登記(相続登記)をします。

相続不動産の、存在する場所を管轄する法務局で登記の申請をします。登記申請手続きの専門家は司法書士です。可能な限り、早いタイミングでの相談をおすすめします。

相続発生のタイミングで
司法書士に依頼した場合のメリット
  • 銀行預金や証券会社への名義変更、解約手続きに必要となる、全ての戸籍、除籍、改正原戸籍を取得してもらえる
  • 取得した全ての戸籍等を使い、法務局で法定相続情報の代理取得をしてもらえる
  • 取得した戸籍をひも解き、相続人の確定をしてもらえる
  • 被相続人の相続不動産に漏れがないよう調査してもらえる(名寄せ帳の取得等)
  • 遺産分割協議書を作成してもらえる(相続財産に不動産が含まれる場合のみ)

不動産の名義変更をするタイミングで相談すれば、登記に必要な書類の取得、作成、登記の申請までを依頼できます。

しかし、早いタイミングで相談、依頼をすると、他の手続きでも必要になる上記の書類を取得できます。手続きが簡略化され、他の相続手続きもスピーディーに進むでしょう。

もちろん、専門家に依頼をしなくても、不動産の相続登記は、相続人自ら申請することは可能です。

相続登記を放置したら?

以前は相続登記には期限がなく、そのため相続登記をせずほっておかれることも少なくありませんでした。

しかし、2024年4月より相続登記が義務化されます。相続を知った日から、3年以内に正当な理由なく相続登記をしなかった場合は、10万円以下の過料が科される可能性があります。相続登記の放置は、リスクばかりが増えるので注意しましょう。

売却ができない

 被相続人の名義のままだと相続不動産の売却ができません。

次の相続が発生する可能性がある

長年放置をしてしまうと、相続人が亡くなることもあり次の相続が発生してしまいます。結果相続人の数がネズミ講式に増えていきます。そうなると遺産分割協議も全員の合意がまとまりにくくなっていきます。

相続登記に必要な書類が揃わない

亡くなった方の住民票等の公的書類は、亡くなってから5年を経過すると保存期間が経過し、役所で廃棄処分をしますので、放置をせずに手続きを進めてください。

専門家の費用が高くなる傾向がある

長年放置していた相続の登記は、相続人も増え、取得する書類も増えます。そのため専門家(司法書士)の費用も高くなる可能性があります。

実家を相続した場合の選択

自分達で住む

相続不動産に元々住んでいた場合や、相続を機に自分達で住むパターンです。

メリットとしては、家賃がかからないこと、思い出の実家を手放さなくて済むこと等です。ただしリフォーム、リノベーションの費用、メンテナンス費用、固定資産税や都市計画税がかかるのはデメリットになります。

人に貸す

人に貸し出し収益化を狙うパターンです。メリットとしては家賃が入ること、思い出も実家を手放さなくて済むことです。

一方デメリットとしては、借りてくれる人がいるかは未知数であること、人に貸し出す状態にする為のリフォーム、リノベーション費用がかかることです。賃貸で得られる収益とメンテナンスにかかる費用のバランスを見極める必要があります。

売却する

自分達が使用、居住する予定がないのであれば売却を検討します。

メリットとしては現金を得られること、固定資産税や都市計画税の負担がなくなることです。相続した不動産を売却した場合、譲渡益が出た場合でも各種控除を利用し、節税も可能です。

売却を検討する方は、相続不動産に適用できる控除があるかの確認も併せて行いましょう。

放置する

相続不動産をただ放置するのはデメリットとリスクしかありません。固定資産税等の税金負担も続きます。また人の住まなくなった家は老朽化が急速に進みます。

また近年の空き家問題に伴い、特定空き家に指定されてしまった場合には固定資産税が最大6倍に跳ね上がるリスクもあります。万が一相続不動産が原因の事故などが起こればその責任も相続人にあります。

相続不動産を放置することは何ひとつ良いことがありません。放置だけは避けましょう。  

不動産の相続トラブルを避けるには事前の対策が必要

特に、遺産が不動産のみの場合には注意が必要です。代償分割をする場合に、不動産は評価方法が複数あることもあり、相続人間で認識が異なり揉めてしまうことがあります。

後々のトラブルを避けるためにも、次のような対策を生前にすることが重要です。

  • 遺留分に留意した遺言書を作成する
  • 不動産を相続する予定の人は代償金を準備しておく
  • 相続人になる人全員に生前話をしておく
  • トラブルになりそうな事がわかっていれば弁護士などに相談をしておく

相続の専門家の種類を知れば不安と無駄が減らせる

専門家に相談する女性

相続手続きは多岐に渡ります。しかも初めての手続きであることも多く、期限の決まっている手続きも多数あります。また相続人同士のトラブルや、普段は疎遠の親族 とのやりとり等、時間と手間もかかります。

手続きの期限に間に合わず思わぬ損失が発生する事が無いよう、自信のない手続きは専門家に頼むことを検討しましょう。

相続手続きの内容によって専門家は異なる

ところで専門家に頼む場合でも、いったい誰に頼めば良いか迷ってしまうのではないでしょうか。

それぞれの手続きに対応した専門家を一覧にしたのでご確認ください。専門家にも特定の得意分野があるものなので、相続に強い専門家に依頼するようにしましょう。

最近は、各士業の専門家が揃った相続に特化した事務所も増えてきています。そういった事務所に依頼をすれば、一つの窓口で相続に関する全てのことを依頼できるので、時間や手間を減らすことができるでしょう。

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相談内容弁護士司法書士税理士行政書士
遺言書作成
相続人調査
(戸籍取得)
遺産分割協議書の
作成
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金融機関、証券会社の
名義変更や解約
不動産の名義変更登記
(相続登記)
   ⚫※1
自動車の名義変更
相続税の申告
準確定申告
相続放棄
相続紛争の
代理交渉
遺言の検認手続き

※1登記申請を自ら代理する弁護士は少なく司法書士に任せることが多い

※2相続財産に不動産が含まれる場合は可

※3遺産分割協議書を相続税申告で添付する場合は可

まとめ

本記事では、相続の基礎知識を幅広くご紹介しました。

実際に相続が発生したタイミングではやるべきことも多く、あっという間に時間が過ぎてしまうものです。あとになって、知らなかった、期限が過ぎてしまったという事がないよう、事前に相続の流れを知ること、基礎知識をつけておくことが大切です。

相続は大変奥が深く、今回お伝えした基礎知識以外にも様々な制度、問題点、知っておくべき特例も多く存在します。自分で知るべき事は知り、手に負えない部分に関しては専門家を活用して悔いのない相続を実現していきましょう。

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