【99%知らない】親が亡くなった実家に住むメリットデメリットを解説

家のメリットとデメリット

兄弟が空き家の実家に無料で住んでいるが、家賃はとれないのか

生前親と同居してきたし、面倒も見たのだから当然実家は自分のものだ

相続財産として遺されたものが実家のみの場合、相続人間でもめ事が起きることは珍しくありません。

本記事では相続した実家について次の点について解説します。

  • 相続した実家に住むメリットとデメリット
  • 相続した実家に住むまでの手続きの流れ
  • 相続した実家の分割の仕方
  • 相続登記をしないと実家に住めないのか?
  • 古い実家は売るべきか?住むべきか?そのヒント

また、親の家の相続登記の期限や、遺産分割協議を早めに行うべき理由など、2023年~2024年に施行される改正民法に基づき解説します。

親が大切に守ってきた実家が原因で、兄弟間でトラブルになるのは避けたいものです。

本記事を読み、トラブルのない実家相続にお役立てください。

目次

相続した家に住むメリットとデメリット

不動産のメリット・デメリット

親が亡くなり相続した実家。手放すのも心苦しいのでいっそ住んでしまおうと考える人もいるでしょう。

相続した実家に住むメリットとデメリットについて解説します。

相続した実家に住むメリット

相続した実家に住むメリット4つを解説します。

【メリット1】住居費が抑えられる

特に今まで賃貸住宅に住んでいた場合、実家に住むことで毎月の家賃という固定費を抑えることができるのは大きなメリットになります。

【メリット2】管理がしやすい

実家が空き家になった場合には、手放さない限り、実家の管理が必要になりますが、自分が住むことで、建物の湿気や臭気による痛みも防ぐことができます。

外部の管理サービスなども不要ですね。

【メリット3】気持ちの問題

親が守ってきた実家を手放さずにすむので罪悪感を感じることもなく、実家を手放す寂しさもありません。

実家に思い入れのある人には大きなメリットでしょう。

【メリット4】節税の可能性

 相続税が発生する相続財産がある場合、小規模宅地等の特例を使い、相続税を大幅に減額できる可能性があります。

亡くなった親と同居していた相続人は、引き続き実家に居住し、かつ相続税申告期限までその宅地を所有していることが要件の1つになっています。

相続した実家に住むデメリット

相続した実家に済むデメリット6つを解説します。

【デメリット1】税負担

相続した実家を売却せず保有する場合には、固定資産税が毎年発生します。固定資産税の額は、毎年4〜6月頃に送付される固定資産税納税通知書に記載されています。

前もって知りたい場合には、役所の固定資産税課や都税事務所で「公課証明書」を取得すれば、実際に払っている固定資産税額が確認できます。

【デメリット2】リフォーム・修繕費用がかかる

実家の多くは築年数の経っていることが多いでしょう。快適に暮らしていくためには、リフォームや修繕が必要になります。

また1981年の建築基準法の改正前に建てられた旧耐震の住宅の場合、地震による倒壊の恐れもあるため、耐震補強リフォームも検討する必要があります。

この耐震補強リフォームには100~200万程度の費用がかかることが一般的です。

【デメリット3】環境の変化による家族への影響

実家と今の住まいが近所の場合を除き、実家に引っ越すことは家族に少なからず影響があります。子どもがいれば、転校が必要になることもあるでしょう。

通勤や買い物、友人関係にも影響があるため、家族と慎重に話し合いをする必要があります。

【デメリット4】相続税の納税に資金が不足する

資産性の高い不動産を相続したものの、相続財産に預貯金がない場合には、相続税の納税資金が足りなくなることがあります。

相続税の申告・納付は相続開始後10ヵ月という期限があるため、相続税の心配がある場合には早めに税理士に相談をしましょう。

特例の適用があるかも確認してもらえますし、適用があれば、大幅な節税ができる可能性もあります。

【デメリット5】相続人間のトラブル

今まで親と実家で同居していた場合、実家は当然に自分のものだと考える人もいるでしょう。

他の相続人からすれば、不動産も相続財産に変わりなく、自分の権利を主張されることも普通に考えられます。

「空き家になると痛むから自分が住んで管理をしてあげよう」良かれと思っていることも、他の相続人から不平不満がでることもあります。

特に相続財産が不動産のみの場合には注意が必要です。

親が亡くなった後の実家は誰のもの?実家に住むには?

家について悩む人

親が亡くなってしまった後、実家は誰のものになるのでしょうか。

ここからは、実家を相続する流れについて解説します。

遺言書を探す

遺言書は原則ほかの分割方法より優先されるため、まずは遺言書が遺されていないか捜索します。遺言書は以下の場所を探してみましょう。

注意点として自筆で書いた遺言書を発見した場合には、封を開けてはいけません。開封するには家庭裁判所で「検認」手続きを行う必要があります。

実家のタンスや本棚

遺言書は自宅で保管しているケースが最も多いものです。

タンスや本棚、仏壇や金庫を確認してみましょう。

貸金庫

貸金庫に保管されているケースもあります。

取引のあった銀行に問い合わせをしましょう。

公証役場

公正証書で遺言を作成した場合には、公証役場で保管をしています。

全国どこの公証役場でも、保管の有無を確認してもらえます。最寄りの公証役場に問い合わせてみましょう。

法務局

法務局で遺言を保管する制度がスタートしています。

全国どこの法務局でも「遺言書保管事実証明書」を請求し、保管の有無を確かめることができます。

遺産分割協議を行う

遺言書が発見されなかった場合、相続財産は遺産分割が成立するまでは、相続人全員共有状態にあります。

この相続財産を、どの相続人が、どの程度、取得するか遺産分割協議を行います。

遺産分割協議は、必ず相続人全員が参加する必要があり、1人でも欠ければ、遺産分割協議は無効となりますので注意しましょう。

実家を相続する場合には次の4つの分割の方法があります。

【実家の分割方法1】現物分割

現物分割とは相続財産を形状、性質を変えずそのまま各相続人に分割する方法です。

例えば長男には実家、長女には預貯金のような形で分割します。

手続き的にはシンプルですが、遺産が実家しかない場合には現物分割ができません。

【実家の分割方法2】換価分割

実家を換価(売却して現金化)し、現金で分割する方法です。

現金であれば公平に分割することができるためトラブルになりにくいというメリットがあります。

一方で、売却には時間がかかること、相続税が発生するようなケースでは申告期限に間に合わない可能性が高い点がデメリットです。

【実家の分割方法3】代償分割

実家を相続した相続人が、法律で定められた相続分を超えた差額分を他の相続人に現金で支払う方法です。

例えば、親と同居していた長男がそのまま実家を相続し、住み続ける代わりに他の兄弟に相続分割合の現金(代償金)を支払うのです。

この場合の長男は、代償金を支払うだけの資金力が必要となります。

【実家の分割方法4】共有分割

実家を相続人全員で共有する方法です。

特に何も考えずまたは、話し合いの決着がつかない場合に、法定相続分で共有にするケースがありますが、トラブルの種になるためおすすめできません。

いざ売ろうと思っても、共有者全員の合意が必要になり売るに売れない事態も想定されます。

また、共有者が亡くなると、兄弟の配偶者や甥や姪と共有関係になることも考えられ権利関係が複雑化します。

このような問題点を考えると安易に共有することはおすすめしません。

分割方法はどれを選べばいいの?

相続財産に実家が含まれる場合の分割方法を紹介しました。

結局どの分割方法をとるのかは、ケースバイケースになってしまいます。

そこで、筆者の独断で各分割方法の難易度等を表にまとめてみました。

相続財産の内訳や、時間的な猶予などによりベストな分割方法は変わりますので参考にしてみてください。

スクロールできます
実家の分割方法難易度公平感トラブルの発生確率メリットデメリット
現物分割実家を分割せず単独で相続できる・相続財産に実家以外の預貯金や株式がないと使えない
・不動産と同程度の資産を分割しないと不公平感が高い
換価分割実家を現金化して分割するため公平感が強い・現金化まで時間がかかることがある
代償分割実家を分割せず単独で相続できる・代償金が必要になるため資産力が必要
・実家の評価額(価格)について揉める可能性がある
共有分割法定相続分で分割するため公平かつ容易・将来トラブルになる可能性が高い
・売却したくてもできない可能性

相続登記を行う

遺言または遺産分割協議を経て実家を相続した後には、相続登記の申請をします。

相続登記

相続登記とは、亡くなった親名義の実家を、相続人名義に変えることです。

相続登記にかかる費用

相続登記にかかる費用は自分で申請してもかかる登録免許税等の実費と司法書士に依頼した場合にかかる司法書士報酬があります。

  • 【登録免許税】土地+建物の固定資産税評価額×0.4%
  • 【その他実費】戸籍取得費・固定資産税評価証明書取得費・住民票除票取得費・郵送費等
  • 【司法書士報酬】8~15万円

相続登記をせずに実家に住み続けられる?

親の生前から実家に同居していたような場合、実家の相続登記をせずに住み続けることはできるのでしょうか。

物理的に住み続けることはもちろん可能です。

今までは相続登記は義務ではなかったために、お金と手間のかかる相続登記はせずに、そのまま住んでいた相続人も少なくありません。しかし2024年4月から相続登記は義務化されます。

相続登記をしないデメリットを詳しく解説します。

相続登記をしないデメリット

悩む男性

相続登記をしない3つのデメリットを解説します。

【令和6年4月から】相続登記は義務化される

今まで相続登記は義務とはされていなかったことを先述しました。相続登記の義務化は令和6年4月1日からスタートします。

相続により不動産を取得した人は、所有権を取得したことを知った日から3年以内に、遺産分割協議により取得した相続人は協議成立日から3年以内に相続登記を申請しなくてはなりません。

そして正当な理由なく相続登記をしない場合には10万円以下の過料の対象になります。

さらに、義務化前に発生した相続に関しても、義務化されることに注意しましょう。この場合は、義務化スタートから3年以内に相続登記をする必要があります。

他の相続人に登記を入れられる可能性

まず前提の話ですが、登記は早い者勝ちであるということを覚えておいてください。

早い者勝ちである登記をしなかったばっかりに次のような事態が起こる可能性があります。

  • 相続人Aと相続人Bは遺産の実家についてAが相続するという遺産分割協議を行った。
  • 相続人Aは、遺産分割協議が成立したのにもかかわらず相続登記をすぐに申請しなかった。
  • 相続人Bは勝手に実家を法定相続分通りに(Aの持分1/2・Bの持分½)で相続登記を申請した。
  • 相続人Bは何も事情を知らない買主Cに登記された自分の持分に見せかけた1/2をCに売り、Cは持分1/2を自分の名義に変更した。

このようなことも最悪起こり得ます。というのも、各相続人は法定相続分に従った相続登記を単独で申請することができるのです。

もし相続人の1人が勝手に登記をしてしまうと、その持分を購入し登記を完了した第三者の買主には、自分が実家を相続したことを主張する事ができません。

このような事が起きぬように、遺産分割協議が成立したのならさっさと相続登記を申請しましょう。

他の相続人の債権者に不動産を差し押さえられる可能性

他の相続人が借金を滞納していた場合、その債権者(お金を貸している人)は、判決を得ることで不動産を差し押さえることが可能です。

もし相続登記を完了していれば、債権者は他人であるあなたの不動産に差し押さえをすることができません。

登記手続が煩雑になる

実家を相続した相続人が、相続登記未了のまま亡くなってしまった場合、2つの相続が発生したことになります。すると、相続人の数が増え、全くやりとりのない人が相続人になってしまう事態もおこります。

そのような人と遺産分割協議を行おうと思ってもなかなか協議が整わないことも起こってきます。

さらにもし協議が整った場合でも、登記申請の内容が複雑になり、集める書類の数も膨大になります。すると登記費用(司法書士報酬)も高額になるため、時間を開けずに相続登記をすることが大切です。

親が亡くなった後に実家に住む際の注意点

悩んでいる男性

 相続した実家に住む場合、次の点にも注意をしましょう。

【リフォーム費用・耐震補強の費用の見積りをまず取る】

実家に住むデメリットでもお伝えした、リフォーム費用と耐震補強の件。実家に住むことを考える前に、まずリフォーム費用・耐震補強の費用の見積りを取りましょう。

思っているより高額になるかもしれません。特に水回りのリフォーム、耐震補強リフォームは高額になりやすいため必ず事前に複数業者の見積もりを取得しましょう。

古い実家はどうする?住むのか売るのかどっちが正解?

実家は築年数が経っていて古いことが多いです。確かに自分が住めば、毎月の住宅費は抑えられ、実家を手放さずにすみます。

また今も実家の近くに住んでいる場合には、実家に移り住むことは問題も少ないでしょう。問題はこれを機に田舎の実家にUターンするような場合です。

結論、住宅費が抑えられるという理由で田舎の古い実家に住むのはおすすめしません。売れるのであれば売ることをおすすめします。

理由を解説しましょう。

【固定費は抑えられるが初期費用は高い】

実家が戸建てなら固定資産税のみ、実家がマンションであれば固定資産税+管理費+修繕積立金を払えば住めるわけですから、固定費を抑えることができます。

しかし、快適に住もうと思えばリフォーム費用・修繕費用がかかります。

初期費用としてまとまった金額を払う必要があること、まとまった費用を払っても築年数は巻き戻せない点、立地は変えられない点について今一度考えてみましょう。

【自分の老後も考慮する】

実家に住んだとして、老後もその場所で不便なく暮らしていけそうでしょうか。

立地がよい実家であれば老後に買い物難民になったりすることもないでしょうし、値上がりだって期待できるでしょう。

しかし実家が、田舎にある場合は要注意です。今後、人口が減っていけば地方の過疎化もさらに進んでいくでしょう。過疎化が進めば今ある、スーパーやコンビニなどは撤退していく可能性もあります。

自分が若く元気なうちはそのような場所でも多少の不便を飲み込み生活していけるでしょう。しかし高齢になった時、思うように生活していくことは難しいかもしれません。

今だけでなく10年先、20年先まで考えることも大切です。もちろん、その面も含め田舎暮らしを楽しみたい人はこの限りではありません。

【子どもの代のことも考慮する】

実家を相続し、実家に住んだとして自分もそのうち高齢者になり亡くなる日がきます。

介護が必要になった時、その場所は子どもたちが苦労するような場所ではないですか?将来子どもが相続して負担になるような実家ではないですか?少しだけ子どもの代の負担も考慮してみましょう。

住めないと感じたら方向転換は早めに

実家に住んでみたものの、思ったより住みにくく、快適ではないと感じることもあるでしょう。特に築古の戸建てになると、冬は寒く夏は暑い。

田舎の場合、周りの環境に溶け込むのにも時間がかかることもあるでしょう。

もしも、実家には住めないなと感じるのであれば、方向転換し、手放すことも考えましょう。今後も空き家の数は増える一方なのに、人口は減っていきます。

しばらく放置をすることは、売却の機会損失が起こります。まずは実家がどの程度で売れるのか把握しましょう。

田舎の実家は売れるのか?と不安な人はこちらの記事をご覧ください。

相続した実家の売却費用は

家と鍵

実家に住もうと考えたものの、意外にリフォーム費用が嵩むし、耐震不安も残る。リフォーム費用がこんなにするなら、実家を売却した方がよいかも。

そうなると、実家を売却する際にかかる費用も気になりますね。実家売却の際も仲介手数料をはじめ、実家の状態によってかかる費用があります。

実家の売却費用についてはこちらの記事で詳しく説明しています。

空き家の実家に住む場合のQ&A

親と同居していたが、親が亡くなったら実家にはただで住めない?

原則として遺産分割協議が成立するまでは、引き続き無償で住めます。遺産分割協議を行い、他の相続人が実家を相続することになれば、その相続人に家賃を払う必要もでてきます。

無償で住み続けたい場合は、使用貸借として貸してもらえないか交渉することになります。交渉がうまくいかなければ、家賃を払う必要があります。

このような事態を避けるには、親の生前に遺言書を書いてもらう、生前贈与を検討することが有効です。

遺産分割協議をあえてせずそのまま住み続けられる?

民法改正により2023年4月より原則、相続開始(親の亡くなった日)から10年経過すれば、法律で定められた割合(法定相続分)で遺産を分割することになります。

たとえば、相続財産が実家のみだった場合、実家でもともと親と同居していた子Aが10年間あえて遺産分割協議を避けていたとしても、10年後には原則、他の相続人子Bと法律で定められた割合で実家を分割し相続することになります。

その場合でも子Aは実家の共有者ではあるので、住み続けることは可能です。ただし、子Bも共有者として実家の権利をもつため、実家に無償で住み続けられるか否かは子Bと交渉することになります。

参考:具体的相続分による遺産分割の時的限界|法務省

亡くなった親の家の名義変更はいつまでにする?

先述したとおり、今まで相続登記は義務とはされておらず、期限もありませんでしたが、2024年4月1日より相続登記は義務化されます。

それにより、所有権を得たと知った日から3年・遺産分割協議をした場合協議の成立日から3年以内に相続登記をしなくてはなりません。

正当な理由がなく相続登記申請をしなかった場合には10万円以下の過料が科される可能性があります。相続登記は、費用や手間がかかるものですが、遺言発見後や遺産分割協議の成立後は滞りなく申請をしましょう。

まとめ

家とリスク

親の残した遺産が実家だけのような場合には、相続トラブルが発生する確率が高くなります。

さらに親の生前、実家で同居していた相続人の子が実家の権利を主張する場合、他に分ける遺産がなければ高確率でトラブルが想定されるでしょう。

相続財産に実家が含まれる場合の分割方法を解説しましたので、自分たちにベストな分割方法を検討してみましょう。

このようなトラブルを避けるためには、親の生前から相続対策を行うことが重要です。

たとえば、遺言書を書いてもらう、生前贈与を検討する、生命保険を利用し代償金を準備するなどの対策が有効です。親が亡くなった後、そのまま実家に住み続けたい人は早めに対策を考えておきましょう。

また、実家は築年数が経っていることが普通ですから、リフォーム・修繕費用がどの程度かかるのかを事前に把握し、その点も踏まえて実家に住み生活していくことを慎重に検討しましょう。

検討する際のヒントも本記事でご紹介しました。2023年~2024年には相続に関する改正民法が多数施行されます。

想像登記も義務化されますし、遺産分割協議に関しても10年以内に成立させなければ場合によっては不利になることもあり得ます。

とはいっても、相続に関する法律は難しい内容もあるため、疑問がある場合には、弁護士や司法書士、税理士などの専門家に相談することをおすすめします。

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