実家じまい・実家売却にかかる費用は?実家じまいをする人の割合も解説

電卓

実家じまいと普通の引越の大きな違いは、家にある物のほとんど全てを処分する必要があることです。

筆者は月に20件以上の不動産の引渡し現場に立ち会ってきましたが、終活の一環として不動産を売却される方、相続した不動産を売却される方々は、大量の物の処分に苦労をされていました。最初は自分達で物の処分をするのですが、大量の物を前に、思うように作業が進まず、引渡し期日が迫ってから、業者に依頼する方も少なくありません。

そこで本記事では、実家の物の処分を業者に頼む時の費用をはじめ、実家じまいにかかる費用について解説します。費用を安く抑えるコツや、業者選びのコツも併せて紹介しますので、是非参考になさってください。

目次

実家じまいをする人の割合

鍵を渡す様子

いざ実家に住む人がいなくなった場合、どの程度の人が実家じまいをするのでしょうか。ここからは、株式会社AlbaLink社が実施したアンケート結果を分析し、実家じまいをする人の割合、実家売却をする理由、逆に実家を売却しない理由を明らかにしていきます。

調査概要

調査の対象:全国の男女803人

調査対象の年代:20代(13.8%)、30代(32.8%)、40代(32.8%)、50代(16.6%)、60代以上(4.0%)

調査対象の年収:199万円以下(33.4%)、200万円以上399万円以下(32.3%)、400万以上599万円以下(21.0%)、600万円以上799万円以下(8.1%)、800万円以上999万円以下(3.1%)、1,000万円以上(2.1%)

出典:株式会社AlbaLink

実家じまいをする人の割合
出典:株式会社AlbaLink

【設問】実家が空き家になったらどうしますか?

アンケートに答えた約半数が、売却すると回答し、続く29%は空き家のままにするという結果になっています。賃貸に出すと答えた割合は、14.3%と意外に低めです。

調査結果から、空き家になった実家を売るなり、貸すなりし実家じまいをしたいと考える人の割合は約6割、更地にすると答えた人も含めれば、約7割の人が何らかの実家じまいをしたいと考えていることがわかります。

続いて、売却すると答えた方達の売却する理由を確認しましょう。

実家を更地にする理由
出典:株式会社AlbaLink

実家が空き家になったら売却すると答えた393名のうち、「売却する理由」の調査結果は次のようになります。(複数回答可)

売却する理由
  1. 固定資産税を払うのは無駄だから(243票)
  2. 今後、使用数可能性はないから(240票)
  3. 現金化できるから(237票)
  4. 特に思い入れがないから(45票)  

売却する理由からは、積極的に売却したいというよりは、今後使用しないものに対する経済的負担を避けるため、合理的に考えた結果、もしくはそうせざるを得ないといった印象を受けます。

一方で、空き家のままにしておくと回答した29%の人は、何故空き家のままにしておこうと考えているのでしょうか。

実家を空き家のままにする理由
出典:株式会社AlbaLink

空き家のままにする理由を票の多い順から3つあげると、次のようになります。

空き家のままにする理由
  1. 解体には費用がかかるから(124票)
  2. 思い入れがあり、売却や賃貸にはだしたくないから(120票)
  3. 将来的に使う予定があるから(116票)

空き家をそのままにしておこうと考える人の中でも、本当は解体、実家じまいをしたいが費用がかかるためそのまま放置するケースと、実家を手放したくないと考え、そのまま空き家にしておくケースがあるようです。ここからは、実家じまいのネックとなっている、解体費用を含めた実家じまいの費用について、どの程度の費用がかかるのかを解説します。

実家の処分にかかる費用とは?

家の相談をする様子

実家じまいにおける、実家の売却にはどのような費用がかかるのか、順番に解説します。

物の片付け・処分費用

実家を売却するためには、まず家の中を空にしなくてはなりません。

身内だけで物の処分をするケース

  • 実家への交通費、ガソリン代、高速代
  • 荷物をゴミ処理場へ運ぶためのレンタカー代
  • 荷物の処理のための備品代(ゴミ袋やテープ、段ボールなど)
  • ゴミの回収費用(粗大ゴミの回収費用)

業者に依頼し物の処分をするケース

親の生前に行う実家じまいでは、不用品回収業者や生前整理サービスのある遺品整理業者に依頼します。

不用品回収業者の相場

一軒家の不用品回収費用の相場は、17~60万円程度とされています。金額に幅があるのは、物の多さやトラックの台数、作業人数や作業をする階数など様々な要因によって変わってくるためとされています。そこで筆者がゴミ屋敷状態の一軒家の不用品回収の見積りを依頼してみました。

見積り前提

実家丸ごとと想定し片付け範囲は4LDKの戸建
ゴミ屋敷の不用品回収サービスを利用、不用品の量は不明とする
2階建てでエレベーター無し、回収の希望日程無し

業者A:見積もり金額602,000円

不用品回収業者の見積額

業者B:見積り金額182,000円

不用品回収業者の見積額

業者C:見積り金額125,400円

不用品回収業者の見積額

同じ見積もりのサイトを使って、同じ条件で見積り依頼をしましたが、驚くほど見積り金額は違います。ただし、現地確認なしのインターネット上の見積りのため、荷物の量などを、正確に把握せず出された見積りです。おおよその相場の範囲には入りましたが、業者ごとのバラツキが大きいことが分かります。そのため、複数の業者に、現場確認のうえで見積りを作成して貰うことが大切です。

遺品整理業者の相場

国民生活センターリポートによる相談事例の分析後の「遺品整理サービスの契約金額(契約購入金額)」は平均42万円との記載があります。

併せて、総務省行政評価局のレポートによれば、遺品整理サービスの見積書に記載された金額は10万円から40万円の間の取引が多くなっているという調査結果が出ています。

正確な金額を把握するためにも、依頼する前には複数の業者に、現場を見てもらい見積りを作成してもらうことが大切です。また遺品の取扱いに精通した、遺品整理士の在籍しているか否かも、業者選定の判断基準とできるでしょう。

見積書にみる遺品整理サービスの金額
参照:法務省行政評価局 令和2年3月 遺品整理のサービスをめぐる現状に関する調査結果報告書

なお、遺品整理業者であれば「みんなの遺品整理」がおすすめです。

価格面、口コミ等をすべて鑑みつつ最適な遺品整理業者が見つかりますので、ぜひご利用ください。

【みんなの遺品整理】

片付け業者の種類

ところで、不要品回収業者と遺品整理業者にはどのような違いがあるのでしょうか。

不用品回収業者は不用品として既に分別されたものを回収し、遺品整理業者は必要なものの選別を含めて整理・回収を行う点が大きな違いです。

さらに、不用品業者は物を不用品として扱うのが基本ですが、遺品整理業者は物を遺品ということに留意し扱ってくれる点も、大きな違いとなります。

遺品整理業者不用品回収業者
遺品整理
(分別)
不用品回収
買取り
焚き上げ・
供養
貴重品の
捜索
清掃

実家じまい・物の処分費用を安く抑えるコツ

お金の相談をする様子

業者に物の処分を依頼する場合、物の多寡やトラックの台数などによっても、費用に差がでることがわかりました。業者に依頼する前に、自分達でできることをすれば、費用を安く抑えることができます。

  • 生前から少しづつ整理を始め、不用品は一般の公共ゴミとして出す、公共のゴミ施設に運びこむ
  • 今後の実家じまいをふまえ見積もりを取ることで、物が減ると費用が安くなるのを親に実感させ、やる気をだしてもらう
  • メルカリ等フリマアプリで、売れそうなものは出品する
  • ジモティーで、無料で引取先を探す
    筆者もいらないダイニングテーブルやカーテン、ラックやデスク等をジモティーに掲載し、引き取って貰った経験があります。処分に困っていたベッドとマットレスも即日引き取り手が見つかりました。
  • 「不要品の買取」の対応をしている業者を選ぶ
  • 業者を選ぶ際は、現地で見積もりをしてくれる業者から選ぶ
  • 見積もりの際は、キャンセル料やオプション費用の確認をする。出来ればキャンセル費用やオプション費用が明記された契約書を発行してくれる業者を選ぶ
  • 不動産業者から業者を紹介された場合には、バックマージンが含まれている可能性もあるため、自分でも他社に見積もりを取って比較する

実家じまい・不動産売却に必要な費用

家の模型と電卓

 実家を売却する場合に、売却前と売却後にどのような費用がかかるのかを解説します。

実家の売却前にかかる費用

スクロールできます
費用の目安備考支払タイミング
物の処分費用一戸建の場合
不用品回収業者17~60万
自分で行う場合
実家への交通費、ガソリン代、高速代
荷物をゴミ処理場へ運ぶためのレンタカー代
備品代(ゴミ袋やテープ、段ボールなど)
不用品の回収時
相続登記費用司法書士に依頼する場合
報酬 8~15万円
+
登録免許税等の実費
自分で申請する場合
登録免許税
不動産の固定資産税評価額×0.4%
その他、登記事項証明書や戸籍謄本取得費等の実費が必要
登記の依頼時または登記の完了時
土地の測量・
境界の確定費用
確定測量
40万~80万
隣地の数が多い場合や、公道に面した土地、複雑なケースでは100万程度かかることもあり確定測量完了時または依頼時
建物解体費用建物坪数が30坪の場合の相場
100万~150万円
隣の家との距離が近すぎる場合や、周辺の道が狭く解体重機がが通れない場合等、費用加算される
補助金・助成金がないか確認
解体工事後
滅失登記費用建物を解体する場合
4~5万円
更地にして売る場合には建物解体後に滅失登記を行う
自分で申請する場合には、登記事項証明書代600円
建物解体後
※土地引渡し時に請求されるケースもあります。

土地の測量、境界確定は完了するまでに3ヶ月程度かかることが一般的です。早めに土地家屋調査士に依頼をし、売却タイミングを逃さないようにしましょう。

建物を解体し、土地のみで売却する場合には、解体のタイミングには注意が必要です。建物を解体した場合、住宅用地の特例が適用されず、土地の固定資産税の減税措置がされません。買主と売買契約を交わしても、買主のローン審査が通らなければ白紙解約される(ローン特約)リスクもあります。そのため、建物解体のタイミングは、仲介業者に相談し適切な時期に行います。

実家売却時・売却後にかかる費用

スクロールできます
費用の目安備考支払タイミング
印紙税不動産の価格による売買契約書に記載された不動産のの価格によって印紙税は変動
国税庁 印紙税
売買契約時または引き渡し時に精算
抵当権抹消登記費用抵当権抹消3~4万円売却に伴う抵当権抹消登記は司法書士が行います。引渡し時
仲介手数料不動産価格×3%+6万円×1.1(消費税)引渡し時
譲渡所得税
住民税
税率
所有期間5年以内39.63%
所有期間5年超20.315%
所有期間10年超6,000万円
以下の部分14.21%
売却利益が出た場合のみ
課税・各種特別控除を使うことで課税されないことも多い
売却した翌年の確定申告時
引越・入居費用賃貸マンション
高齢者施設
同居など次の住まいに移るための費用
賃貸契約や施設の入居契約時

実家じまい・実家売却で利益が出たらかかる税金

話し合う家族

不動産を売却し利益が出た場合には表にあるように、譲渡所得税・住民税がかかる可能性があります。

【譲渡所得税・住民税の計算】

譲渡収入-(取得費+売却費用)―特別控除額=課税譲渡所得

譲渡収入とは、不動産売却代金に固定資産税と都市計画税等の清算金を足した、全ての収入です。譲渡収入から親が実家を買ったときに要した費用(取得費)と仲介手数料や建物解体費用等(売却費用)を差し引きます。そこから各種の特別控除を引いた額が、課税される金額になります。譲渡所得税・住民税は不動産を所有した期間によって税率が変わります。実家売却の場合、親が実家を所有していた期間で次のように税率が変わるのです。

スクロールできます
実家の所有期間
(親の所有期間)
所得税の税率住民税の税率合計
短期譲渡所得5年以下30.63%9%39.63%
長期譲渡所得5年超15.315%5%20.315%
軽減税率の特例10年超
譲渡所得6,000万円以下の部分
14.21%4%14.21%
軽減税率の特例10年超
譲渡所得6,000万円以上の部分
15.315%5%20.315%

各種の特別控除・特例としては次のようなものがあります。

各種別控除・特例
  • 居住用財産の3,000万円の特別控除
  • 取得費の特例
  • 軽減税率の特例
  • 空き家売却の特例

実家を売却した時の税金・費用に関してはこちらの記事で詳しく解説しています。

実家を賃貸する場合の費用

家の模型とお金

ここからは、実家を売却せず賃貸に出すケースでは、どのような費用がかかるのかを解説します。

物の片付け・処分費用

売却する場合と同様、実家の物のすべてを片付ける必要があります。相場については前述した処分費用と同じです。

リフォーム費用

人に貸し出せる状態にするため、実家のリフォームを行います。

実家が一戸建の場合、リフォーム金額は建物の状態や、リフォーム規模により500〜2,000万程度かかります。リフォーム費用はケースバイケースのため、事前に複数の業者に見積もりを依頼しましょう。

戸建賃貸を経営する上で、リフォームにかける費用は家賃3年分程度が妥当なラインです。逆に言えば3年でリフォーム費用を回収できない計算であれば、賃貸にすること自体を、再検討をしたほうがよいでしょう。

修繕費

エアコンや給湯器等が故障してしまっている場合には修繕が必要です。

仲介手数料 家賃×1ヶ月~

入居者の募集を業者に依頼する場合、入居者が決まれば手数料として、月額家賃の0.5ヶ月〜1ヶ月分を支払います。

固定資産税・都市計画税

実家を賃貸にした場合でも所有者である限りは、固定資産税や都市計画税の負担があります。

施設賠償保険の保険料

貸し出した実家が原因で、入居者がケガをした場合等に応じる損害賠償を補償するための保険です。もしもの時のために必ず加入をしましょう。   

後悔しない実家じまいのための費用

白い家と電卓・間取り図

生まれ育った実家を売却する場合、寂しい気持ちになったり、本当に手放してよいのかと迷ってしまう人も多いでしょう。そこでここからは、後悔しない実家じまいのための提案と費用を解説します。

売却前に実家の撮影をする

なつかしい思い出の詰まった実家を、写真や動画に残してみてはいかがでしょう。解体後や、人に売却した後にはできないので、実家じまいを行いながら、実家の撮影をするのがおすすめです。

実家のオーダーメイドジオラマ

思い出の詰まった実家をミニジオラマで形に残すサービスがあります。

手放してしまっても、いつでも実家のミニチュアを見られれば、ホッとするでしょう。

自分のために作るのはもちろん、実家を手放すのを寂しく思っている親にプレゼントすれば、きっと喜んでくれるでしょう。

さかつうギャラリー お家の模型作ります

捨てたくないものが多い場合はトランクルームも検討する

実家じまいのために、荷物の整理・片付けをしたものの、大切なもの、捨てられない物が多く、実家じまいが進まない方もいるかもしれません。それなら思い切って、トランクルームの利用を検討しましょう。

トランクルームは、月々3,000円程度から借りることができます。毎月利用料がかかるため、本当にとっておくべき物なのかを再検討する機会が増えるでしょう。

まとめ 

実家が空き家になった場合、約半数の人が実家を売却するという調査結果がでました。一方で、空き家のままにしておくと回答した人の中には、費用がネックとなり実家じまいをしない傾向があることがわかりました。

そこで、本記事では、実家じまいにかかる費用と安く抑えるコツを解説しました。適切な管理をせず、実家を空き家のまま放置しておくことは、このご時世ではリスクが高く、今後リスクはますます高まるはずです。リスク回避のためにも、費用を安く抑えるためにも、自分で行える荷物の片付けから、実家じまいをスタートしていきましょう。

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