実家じまいの相談はいったい誰にしたらよいのでしょうか。
実家じまいの必要性はわかっていても、何から手を付けたらよいかわからないという人も少なくありません。
そこで本記事では、元司法書士として相続に関する相談実績を豊富にもつ私が、実家じまいの各過程でのベストな相談先を紹介します。
不動産や相続、相続税がからむ実家じまいは相談先を間違えてしまうと思わぬ損失が発生してしまうこともあります。ぜひ本記事を参考にしていただき、ベストな相談先を見つけてくださいね。
実家じまいの相談は『相続』『片付け』『実家の処分』
実家じまいはざっくり3つの要素『相続』『片付け』『実家の処分』に大別できます。
「相続→片付け→実家の処分」の過程でどのような相談が発生するのでしょう。
実家じまいの相続
実家じまいを行う際にまず直面するのは相続の問題です。
相続発生前と相続発生後に分けて考えてみましょう。
相続発生前の相談事
相続発生前は、生前にできる相続税対策や相続争いを回避するための対策について相談することが多いでしょう。
具体的には、
- 生前贈与
- 相続税対策
- 遺言書の作成
- 親の認知症リスクに対する成年後見制度に関して
- 民事信託
などの相談が中心になるでしょう。
相続発生後の相談事
相続発生後は次の様な相談内容が考えられます。
- 遺言書の検認について
- 遺産分割に関する相談
- 相続税に関する相談
- 相続放棄に関する相談
- 不動産の相続登記に関する相談
実家じまいの片付けの相談
実家じまいでいちばん骨が折れるといわれる『実家の片付け』。
実家の片付けに関しての相談は以下のようなものが挙げられます。
相続発生前
相続発生前には、
- 生前整理について
- 親と揉めずに実家を片付ける方法
などについての相談が中心となるでしょう。
相続発生後
相続発生後は、
- 遺品整理に関する相談
- 形見分けの相談
- 残すべき遺品の相談
が挙げられます。
実家じまいの実家の処分
実家じまいは相続発生前と相続は生後でそれぞれ次の様な相談が発生するでしょう。
相続発生前
- 実家のリフォームや実家からの住み替えによる実家売却
- 賃貸
- 住み替え先の相談
- 高齢者施設の紹介 など。
相続発生後
- 実家の売却
- 解体の相談
- 境界線の相談
- 遺産の分割方法の相談
実家じまいの相続に関する相談先
実家じまいの相続に関しては主に専門家が相談先となります。
専門家にも実は得意分野がある一方、扱っていない分野もあるので、『相続』を前面に出している専門家に相談をすることが重要です。
- 税理士
- 弁護士
- 司法書士
- 葬儀社
- 相続コンサルタントやアドバイザー
相続税がかかりそうならまず税理士
税理士が専門とする分野はお金・税金に関することです。
相続税がかかりそうな場合はまず税理士に相談をします。税金に関しては、圧倒的な知識を持っているので、迷わずに税理士に相談しましょう。
以下の相談は税理士の専門分野です。
- 生前の相続税対策
- 亡くなった人の確定申告(準確定申告)
- 相続税の申告
- 相続不動産の譲渡所得税に関する相談
- 相続不動産を税制面で有利に処分する方法
- 相続不動産を賃貸活用する場合の所得税等や確定申告に関する相談
親の借金があるなら司法書士・弁護士
他の専門家や一般の方で相続放棄の相談を受けている人もたまにいますが、やめた方がいいです。
相続放棄は認められないと、亡くなった親の借金を負うことになり損害が発生しますので、必ず専門家に相談しましょう。
相続放棄は弁護士と司法書士どちらに頼む?
相続放棄は家庭裁判所に相続放棄の申述書を提出して手続きが始まります。
この申述書を作成・提出できるのは、弁護士と司法書士と本人です。
- メリット
- 相続放棄に関する代理人になれるため、申述書の作成をはじめ裁判所とのやりとりを全てまかせることができるので手間がない
- デメリット
- 費用が高め
- 相続放棄の弁護士費用相場:5~10万円
- メリット
- 相続放棄に関する書類作成を任せることができる
- 費用が安い
- 相続放棄の司法書士費用相場:3~5万円
- デメリット
- 相続放棄の代理人にはなれないため、裁判所とのやりとりは自分で行う必要がある
遺産相続で揉めている・揉めそうなら弁護士
他の専門家やコンサルタントは、たとえ相談が受けられたとしても(本来NGですが)、最終的に訴訟になったときには、弁護士でないと対応できません。(認定司法書士は140万円までの遺産の揉め事なら対応できますが)
相続問題に強い弁護士に相談してくださいね。
親の生前に、今後の相続問題回避の相談をするのであれば、税理士・弁護士に相談しましょう。
相続で揉めるのは『お金』が絡み、お金で解決できることも少なくありません。ですので相談をするなら相続に強い税理士がベストでしょう。
遺産分割の内容が決まっているなら司法書士
遺言書・遺産分割協議書に関しては『争いがないこと』が前提です。争いがあるなら弁護士ですのでお間違いなく。
実家じまいがからむ遺産分割協議書や遺言書は、最終的に登記することに繋がるため、司法書士に相談するのがコスパが良いです。
なぜなら、相続登記は司法書士・弁護士・本人しかできません。弁護士に依頼しても、結局登記は弁護士の知り合いの司法書士が行う事になるケースがほとんどです。
親が事業をしていたのなら税理士/司法書士
顧問税理士がいる場合はその方が相談に乗ってくれるはずです。
また会社の登記簿も変更しなくてはいけません。この場合は司法書士が相談先です。
さらに会社の社会保険は社会保険労務士が専門家です。顧問の社会保険労務士が相談に乗ってくれるでしょう。
- 会社のお金・株式関係=顧問税理士
- 会社の登記の変更=司法書士
- 会社の社会保険関係=顧問社労士
葬儀社
葬儀社では、税理士や司法書士などの専門家を紹介してくれるケースも少なくありません。
専門家を探す手間がない一方で、何らかの手数料が発生して専門家費用が割高になる可能性もあるため注意しましょう。
解決策は、相見積もりをとることです。
相続コンサルタント・相続アドバイザー
相続コンサルタントや相続アドバイザーという肩書きで、実家じまいに関する相談を受ける方もいます。
しかしながら、最終的な贈与税の申告や確定申告は税理士でないと代理できませんし、相続登記は司法書士しかできません。
であれば、ダイレクトに専門家に依頼した方が、知識も豊富なことが一般的ですし、余計な費用がかかりません。また不動産会社の営業マンでも相続関係の資格を持っている方もいます。
このケースはメリットで、同じ不動産を売却するにしても、相続の知識を持った営業マンだと安心です。
実家じまい片付けの相談先
実家の片付けに関しての相談先は、相続発生前と相続発生後で相談先が変わります。
相続発生前:片付けアドバイザー等
相続発生前は、いかに親と揉めずに実家を片付けるかや、実家の整理整頓の仕方を相談することが一般的でしょう。
実家片付けアドバイザーやコンサルタント等、様々な協会があり、相談に乗ってもらえるサービスを提供しています。
ココナラでは様々な実家の片付けに関するサービスが提供されています。
私が探したところ、メールで実家の片付け相談を受けてもらえるサービスを発見しました。
相続発生後は、片付けアドバイザーよりも、遺品整理業者に相談した方がより遺品に特化した相談が可能でしょう。
形見分け遺品の見分け方や等で困っている場合には、相談をしてみるのもよいでしょう。
また片付けのプロが空き家と実家に特化した片付けの本を出版しています。
「相談までは・・・」と思う方はこちらの本もおすすめします。
一番わかりやすい! 片づけのプロが実践 実家と空家の片づけ方 | サマンサネット, 杉之原 冨士子, 野口 幸恵, 大西 真史 |本 | 通販 | Amazon
相続後の片付け相談は遺品整理業者
遺品整理についての相談は、遺品整理業者が経験も豊富なため、より実情に即したアドバイスをもらえるでしょう。
しかし、業者に依頼しない場合には相談がしにくいですよね。
そこで1冊の本をおすすめします。遺品整理のプロによって書かれた実践本になっています。
実家じまい「実家の処分」の相談
相続した実家の売却や賃貸としての活用等の相談窓口は次のとおり、不動産会社が中心になります。
- 不動産仲介会社
- 不動産買取会社
- 不動産賃貸仲介会社(管理会社)
- 空き家バンク(地方自治体)
- 空き家のマッチングサイト
- 弁護士・司法書士・土地家屋調査士
不動産仲介会社
- 不動産の売却方法
- 相続人間の売却代金の分割
- 査定
などの相談を受けてもらえます。
先述しましたが、営業マンの中には相続に関するアドバイザー資格をもつ人もいるため、総合的に相談にのってもらえるケースもあるでしょう。
また不動産仲介会社は弁護士・土地家屋調査士・司法書士・税理士とのネットワークを持つ会社が多いため、時間がない人や窓口を一括したい場合には、不動産仲介会社から紹介してもらうことも可能です。
複数の業者に実家の訪問査定を依頼し、査定額と同時に営業マンとの相性を確認することが大切です。
不動産買取会社
「こんな実家売れるかなぁ」と不安に思っている場合には、不動産買取会社へ相談をしてみましょう。
買取業者の中には売りにくい不動産(たとえば再建築不可物件や築古物件、事故物件)でも積極的に買取をしてくれる業者もいます。
買取業者に相談する場合も、まずは査定を依頼して、信頼のできる業者なのかを見極めましょう。
空き家バンク(地方自治体)連携のNPO団体
「不動産会社に相談をしてみたものの、取り扱えないと言われた」そんなケースもあるかもしれません。
民間の不動産会社は営利目的で営業しているため、利益がでないと思われる場合には、取り扱いを断られます。
そんな時は、実家のある自治体が『空き家バンク』を提供していないかホームページ等で確認しましょう。NPO法人と連携して空き家バンクを推進している自治体も多く、相談はNPO法人で受けてもらえるでしょう。
民間の空き家バンク(不動産ポータルサイト)
空き家バンクの情報を『at home空き家バンク』として転載しているat homeでは空き家相談士が相談を受けるサービスを提供しています。
at home 空き家バンク「空き家相談士」空き家相談ができる事業所一覧
弁護士・司法書士・土地家屋調査士
遺産に不動産がある場合は、相続トラブルの発生率が高いものです。
不動産の分割方法や売却代金の分割で揉める場合などは弁護士に相談するのがおすすめです。
国に土地を返したいと考える場合には、空き家問題に力を入れている弁護士・司法書士に相談してください。土地家屋調査士は、土地の境界に関して専門的知識のある専門家です。
実家じまい相談先選びの注意点
実家じまいの相談をする際の相談先を紹介しました。
ここで、相談をする際に注意して頂きたい次の点について解説します。
- 税金や法律関係の相談先に関して
- 相談先は実家付近、相談者の付近どちらがいいのか
税金・法律は国家資格者に相談
相続税や確定申告などに関する税金面や、相続放棄、遺産分割などに関する法律的な事で相談をしたい場合には、国家資格者に相談するのがベストです。
逆に資格を持っていない人に相談すると、いざ問題が起きた時に責任の所在がありません。
国家資格者であれば、専門的な知識を豊富にもっているうえ、何か問題があれば、「税理士会」「弁護士会」「司法書士会」などの相談できる機関があり、責任の所在もはっきりします。
相談先の場所について
相談先は「実家の近くの相談先がいいのか、それとも自分の近くの相談先がいいのか」迷ってしまうかもしれません。
それぞれの専門家の業務の特徴を踏まえ解説しますね。
士業のなかで一番IT化が進んでいるかもしれません。
相談はZoom等でも行ってもらえ、相続税の申告もオンラインで可能です。
相談先は理論的には全国どの事務所でも可能ですが、対面で相談等したい場合には自分の家の近くで選べばよいでしょう。
相談はオンラインで行っている事務所も多いため対面を希望しなければ理論上は全国どこの事務所でも相談可能です。
遺産分割で揉めてしまい調停に発展する場合には、相手方の住所地の家庭裁判所が管轄裁判所になります。そこまで考慮するならば、相手方の住所地に近い事務所が良いでしょう。
相続登記の相談(遺産分割協議をする場合)には、相続人が集まりやすい場所の事務所がベターです。
というのも、原則相続人全員と会う必要があるため、遠方の司法書士に依頼すると交通費や日当が加算されることがあるためです。
実家の測量や建物解体による滅失登記の相談は、実家のエリアの事務所に相談をしましょう。
場所が遠い事務所に頼むと、日当や交通費が加算されます。
相談内容 | 弁護士 | 司法書士 | 税理士 | 行政書士 |
遺言書作成 | ⚫ | ⚫ | ⚫ | ⚫ |
相続人調査 (戸籍取得) | ⚫ | ⚫ | ⚫ | ⚫ |
遺産分割協議書 の作成 | ⚫ | ⚫※2 | ⚫※3 | ⚫ |
金融機関、証券会社 の名義変更や解約 | ⚫ | ⚫ | △ | ⚫ |
不動産の名義変更登記 (相続登記) | ⚫※1 | ⚫ | ✕ | ✕ |
揉めている遺産分割 の調整 | ⚫ | ✕ | ✕ | ✕ |
相続税の申告 | ✕ | ✕ | ⚫ | ✕ |
準確定申告 | ✕ | ✕ | ⚫ | ✕ |
相続放棄 | ⚫ | ⚫ | ✕ | ✕ |
相続紛争の代理交渉 | ⚫ | ✕ | ✕ | ✕ |
遺言の検認手続き | ⚫ | ⚫ | ✕ | ✕ |
※1登記申請を自ら代理する弁護士は少なく司法書士に任せることが多い
※2相続財産に不動産が含まれる場合は可
※3遺産分割協議書を相続税申告で添付する場合は可
相談の窓口として不動産仲介会社はオールマイティ
実は弁護士・司法書士・家屋調査士・税理士などの専門家をはじめ、不用品回収業者・リフォーム業者など実家じまいで必要な相談先は不動産仲介会社とコネクションがあります。
相談をしたいと声をかければ、手配をしてもらえることが多いでしょう。
窓口を一本化したい場合や、仕事などが忙しく時間が取れない場合には、不動産仲介会社に相談してみましょう。
まとめ
実家じまいの相談先を私の経験を踏まえて本音で紹介しました。
どの分野について相談をするときにも同様ですが相談先との相性だけでなく、まず前提として、基礎知識・専門知識を持った人に相談することが何より大切です。
そして責任をもってくれる人なのか、立場なのかを見極めることも重要なのです。
余談ではありますが、私の父も税理士資格のない人に税務の相談&記帳の依頼をしていた時期がありました。(もちろん費用を払って)
言われたとおりに申告を行い、意図せず税金のペナルティを負ったことがあります。税務調査の時も資格者じゃないため、出てくることもできず父一人で散々な目にあったのを見ています。
こんな時、税理士であれば「責任をもって税務調査に同行してもらえたのに」と、速攻税理士に依頼をしました。
こういったことも起こり得るので、相談先はしっかり見極めてくださいね。