実家を処分するには一体どのくらいの費用がかかるのでしょうか。実家の処分は何度も経験するものではないため、どのタイミングで、どんな費用がかかるかわからず、不安ですね。
本記事では、実家の処分費用を知りたい人にむけ、次の内容を解説します。
- 一軒家の実家の処分 高額な費用3選
- 実家売却の費用、発生のタイミングと費用相場
- 想定外の費用の発生を避けるための対処法
一軒家を処分するには、不動産により多額の費用がかかるケースもあります。
特に相続した実家の解体費用を誰が払うかに関しては、相続人同士でもめてしまうケースも少なくありません。解体費用は高額になることが多いため、払えなくて困っている人も。
解体費用は誰が払うのか、解体費用が払えない場合はどんな対処法があるのかについても確認してください。
本記事後半では、売主として知っておくべき、契約不適合責任についても解説します。契約不適合責任を知らず、安易に契約を結ぶと思ってもいない費用を請求される恐れもあります。
ぜひ最後まで読み、後悔のない実家じまいを行っていきましょう。
一軒家の実家の処分【高額な費用3選】
一軒家の実家を売却・処分する際に、高額になりやすい費用3選について解説します
解体費用
実家を取り壊し、更地として売却する場合にかかる解体費用です。特に、解体費用は売買代金が入る前のタイミングで支払うことも多いため負担になります。
解体工事費単価
木造3~4万円/坪 ※解体工事費に付帯工事費用等が加算されます。
30坪の一軒家の解体費用相場
100万円~150万円
測量費用
お隣との土地の境界が不明確な場合には、境界確定測量を行い、境界を明確にしたうえで売却をするのがトラブル防止に効果的です。
これを確定測量といいますが、隣地が公道や河川など国や自治体所有地の場合(官民境界)と隣地が民間の所有地の場合(民民境界)で測量費用の相場も変わります。
隣地が民間の所有地 【民民境界】 | 隣地が国・自治体の所有地 【官民境界】 | |
---|---|---|
費用相場/100㎡ | 30~60万円 | 50~80万円 |
隣地の所有者が多い場合や、土地の面積が広大な場合、土地形状が複雑な場合などは相場よりも高額になる可能性があります。
実家の片付け費用
実家には、自分では片付けられないほどの荷物があることも少なくなく、遠方の実家の場合には年単位で時間がかかることも。片付け業者に依頼をすると、1~2日で作業は完了します。
一軒家4LDKの片付け費用の相場は次のとおりです。
- 不用品回収業者の相場:17~60万
- 遺品整理業者の相場:20~60万
実家の片付け費用を安くする方法は本記事で後ほど解説します。
実家の処分前に確認すべき点
更に、実家の相続登記をした場合や、実家の不用品を売却していた場合などは、相続放棄が認められなくなるため、相続放棄を検討する場合は、まず最初に司法書士や弁護士など専門家に相談をしましょう。
実家の処分前の準備にかかる費用
実家を売却する前の準備段階でかかる費用は次のようなものがあります。
- 近隣への挨拶の手土産費用:1,000円×5~6軒分
- 実家の片付けの費用:17~60万円
- 相続登記費用:登録免許税+実費+8~15万円
- 測量費用:30万~80万円
- 修繕費用:故障箇所による
- 建物解体費用:30坪の一軒家の相場 100万円~150万円
- 滅失登記費用:4~6万円
近隣への挨拶の手土産費用
実家の片付けを始める前に、近隣の方への挨拶を忘れずにしましょう。
挨拶は向こう3軒両隣の範囲で行います。挨拶の際に1軒あたり1,000円前後の手土産を持参するとベターです。挨拶の範囲、コツや挨拶文のテンプレートは下記の記事を参考にしてください。
実家の片付け費用
実家の片付けは実家じまいのスタート。自力でやるといちばん大変だと、経験者は口を揃えて言います。そのため、実家が遠方にある場合や、荷物の量が多い場合には業者に任せることをおすすめします。
ここで時間がかかってしまうと、実際に実家の売出し、買取などの処分が始まりません。
遺産整理業者
遺品の選別、貴重品の捜索もサービスに含まれ、荷物を遺品として大切に扱ってもらえるのは遺品整理業者です。間取りや荷物の量により費用は変わります。
1軒家(4LDK)の費用相場:20万~60万円
相場に幅があるのは、荷物の量や階段の有無、搬出経路の難易度などにより作業人数、作業時間が変わってくるためです。
不用品回収業者
実家にある仕分けされた後の不用品を一気に回収してくれるのが不用品回収業者です。
1軒家(4LDK)の相場費用:17万~60万円
実際に筆者が机上見積もりを数社にお願いしたところ17~60万円とやはり依頼する業者により見積額に幅がでました。
片付け業者の費用を抑えるためには
遺品整理業者も不用品回収業者も、同じ条件の見積依頼でも、出てくる見積額に大きな差があります。必ず複数社に見積もりを依頼し、適切な業者にお願いをしましょう。
遺品整理業者や不用品回収業者の費用については、下記の記事でも詳しく解説しています。
相続登記費用
相続で引き継いだ実家の名義を、相続人の名義に変更するのが相続登記です。
相続登記費用は登録免許税等の実費と司法書士の報酬を合計した費用です。
登記費用=登録免許税+その他実費+司法書士報酬
登記申請は自分で行うこともできますが、時間と手間がかかり、何度も法務局へ行かなくてはならないため、司法書士に任せましょう。
費用内訳 | 実費 | 備考 |
---|---|---|
登録免許税(印紙代) | 固定資産評価額×0.4%(土地・建物) | マンションの場合の土地(敷地)持分に課税 |
戸籍謄本・住民票除票等 の必要書類の取得費用 | 5,000円~20,000円 | 戸籍は亡くなった方の出生から死亡までの全て必要 |
登記事項証明書 | 1通600円×通数 | 不動産ごとに取得する |
固定資産税評価証明書 の取得費 | 1通300円前後×通数 | ー |
郵送費 | 2,000円~6,000円程度 | ・遠方の役所への書類請求 ・遠方法務局への登記申請 の際に郵送利用を想定 |
【登録免許税の算出例】
固定資産評価額:土地 1,000万円、建物 200万円
(1,000+200)×0.4%=48,000円
【実費費用総額】
実費費用は自分で登記申請をしても必ずかかる費用です。土地1筆、建物1棟の不動産の相続登記であれば、登録免許税を除いて2~3万程度と考えておけばよいでしょう。
【司法書士報酬】
戸籍の取得、遺産分割協議書の作成から登記申請まで全て任せて8万円~15万円程度になります。何代かにわたり相続登記がされていない場合や、相続人の数が多い場合、不動産の数が多い場合などは、追加報酬が発生します。
報酬は自由化され、事務所ごとに異なるため、相見積もりを取ることをおすすめします。
測量費用
冒頭でも解説しました境界確定測量は、土地の境界を確定するために行います。測量には2~3ヶ月、場合によっては更に時間がかかることも少なくありません。
買主が決まり売買契約をしたのち、引渡しまでの間に行うことが一般的ですが、測量が長引き引渡しに間に合わなくなるリスクもあります。
そのため、測量のタイミングは不動産業者に相談しながら勧めていく必要があります。
- 隣地が民有地(民間の所有地)の場合 30~60万/100㎡
- 隣地に官有地(国や自治体の所有地)の場合50~80万/100㎡
修繕費用
築年数が古く、古屋付きで販売する場合を除き、建物を含めて売却する場合は、壊れたものの修繕をした方が売れやすくなるでしょう。
水回りやエアコンなど日常的に使う設備に故障箇所がある場合には、修繕をすることをおすすめします。
ホームインスペクション費用
ホームインスペクションとは、建物に精通したホームインスペクターと呼ばれる専門家が、建物検査、診断を行うサービスです。雨漏り、シロアリ被害や建物の傾きなども検査します。
調査結果を参考に、事前に建物を修繕することもでき、後に解説する契約不適合責任のリスクヘッジにもなります。
調査内容や費用は、依頼するホームインスペクターにより異なりますが、目視で調査をする一次検査で5~7万円、目視できない部分までの調査をする二次検査で6~12万円が相場です。
費用相場 | 調査内容 | |
---|---|---|
目視でできる 調査 | 一軒家で 5~7万円 | 基礎・梁・柱・建具等の調査 給排水管の水漏れ確認 建物傾き調査 開口部の確認など |
目視でできない 調査 | 一軒家で 6~12万円 | 屋根裏・床下の確認 屋根の劣化調査 |
建物解体費用
更地として売却する場合には、建物解体の費用が必要です。
建物解体費用の相場は冒頭で解説しましたが、解体業者により見積り費用にも幅がでるため、必ず相見積りを取りましょう。
- 30坪の場合 100万~150万円
- 50坪の場合 200万~250万円
建物解体を行う前に次の点に注意をしましょう。
- 住宅用地の特例が適用されず固定資産評価額が上がってしまう
- 建物解体を行うと相続放棄が認められない
- 再建築不可の敷地ではないか確認が必要
そのため建物の解体は自分だけの判断で決めず、不動産業者に相談しながら進めましょう。
実家の解体費用は誰が払う?
親が亡くなり相続した実家の解体費用は、誰が負担するのでしょうか。
遺産分割協議を行う前は、亡くなった人の残した遺産は相続人が全員で共有している状態のため、解体費用も相続人全員で負担することになるでしょう。
この場合は、解体自体も相続人全員の同意が必要です。
相続人の1人が率先して解体を行う場合には、後々トラブルにならないように、複数社に見積もりを依頼し、妥当な価格で依頼した証明を残すとともに、見積書や契約書、領収書などの書類は全て保管しておきましょう。
解体費用が払えない場合
解体費用はまとまった金額になるため、解体費用が払えないこともあるでしょう。
その場合は次のような対処法を検討してみてください。
- 自治体の補助金を活用
- 解体ローンを活用
- そのままの状態で買取業者売る
- 相続放棄をする
建物滅失登記費用
建物滅失登記の専門家は土地家屋調査士です。
自分で登記申請を行うこともできますが、その際は平日何日か実家のあるエリアを管轄する法務局に行く必要があることに留意してください。
- 実費5,000~8000円程度
- 家屋調査士の報酬4~5万円程度
実家売却時にかかる費用
続いて、実家の売却の際にかかる費用について解説します。
- 仲介手数料 物件価格による
- 印紙代 物件価格により200円~
- 譲渡所得税と住民税 譲渡益が出たときのみ発生
仲介手数料
不動産売却が無事成約した際には、不動産業者に仲介手数料を支払います。
手数料の金額は下記の表の通り、物件価格により変わります。仲介手数料のシミュレーションはこちらのサイトで算出できます。
400万円以下の空き家の仲介をした場合、不動産業者は規定の仲介手数料に調査費用相当額をプラスした198,000円(税込)が請求できるようになりました。この変更は、売主様に請求する仲介手数料にのみ適用になります。
【200万円の不動産の例】
- 2017年12月31日まで→200万円×5.5%=110,000円
- 2018年1月1日から→198,000円請求可能=仲介手数料は88,000円増える
今まで価格の低い不動産の仲介は、経費割れしてしまうリスクがあり、不動産業者も積極的に扱えませんでした。そのような経緯があり、売主様に請求する仲介手数料の変更がされたのです。
課税事業者である不動産仲介業者に支払う仲介手数料
消費税を含まない売買価格 | 手数料率 | 速算法 | 備考 |
---|---|---|---|
200万円以下 | 5.5% | 5.5% | 売買代金400万以下の空き家の仲介をした場合、仲介手数料とは別に現地調査費が加算できる。 仲介手数料と併せて売主に対し19.8万円を上限として請求可能。 |
200万円超~400万円以下 | 4.4% | 4.4%+22,000円 | |
400万円超 | 3.3% | 3.3%+66,000円 | ー |
印紙代
売買契約を締結する際には契約書には印紙を貼付します。この印紙代は、不動産の成約価格により下記の様に決まっています。
実務上では、この印紙代を節約するため、印紙の貼付された契約書原本は買主様に渡し、売主様には契約書コピーをお渡しするケースも少なくありません。
出典:国税庁
譲渡所得税・住民税
実家を売却し、譲渡所得がある場合には譲渡所得税・住民税が課税されます。
売却した価格ー(取得費+譲渡費用)=譲渡益
- 【取得費】親が実家を購入した際の購入費用、仲介手数料、登記費用など
- 【譲渡費用】今回の売却にかかった仲介手数料、測量費用、建物解体費用・登記費用など
計算された譲渡益から特別控除額を差し引くと、譲渡所得が算出されます。譲渡所得が0またはマイナスの場合には、譲渡所得税・住民税はかかりません。
譲渡益から差し引く特別控除額には下記の様な控除があります。
- 居住用財産の3,000万円特別控除
- 空き家の3,000万円特別控除
- 軽減税率の特例
特別控除の詳しい解説はこちらの記事をご覧ください。
注意点として、実家の売却時に「親が購入した際の売買契約書」などの取得金額が判明する書類が見つからないケースがあります。その場合、取得費は今回の売却価格の5%で計算され高額な譲渡所得税・住民税がかかるケースもあります。
実家の片付けの際に、親が実家を購入した当時の売買契約書等を捨てないよう注意してください。
譲渡所得税が課税される場合の税理士費用
実家の売却により譲渡所得が発生した場合には、翌年の2月中旬~3月中旬までの期間に確定申告を行う必要があります。
確定申告は自分でも行う事も可能ですが、数字が苦手な場合は税理士に依頼をしましょう。わたしもいつも税理士に依頼します。
譲渡所得に関する確定申告:5~10万円
実家売却時に知っておくべき契約不適合責任
実家は築年数が経っていることも多く、設備の不具合などが発生していることは少なくありません。
ここから解説する契約不適合責任は、不具合がある可能性の高い不動産売却をする場合には必須の知識です。
契約不適合責任とは
契約不適合責任とは、売買契約の内容と引き渡した不動産が適合しない場合に、売り主が負う責任です。
たとえば、雨漏りのない中古住宅の売買契約だったのに、いざ住んでみたら雨漏りがあった場合には、売主は責任を負います。
買主が売主に請求できる権利は次の4つです。
契約不適合責任の買主の権利
買主が契約と違う不動産を引き渡された場合に、行使できる権利は次の4つです。
- 追完の請求
- 代金減額請求
- 損害賠償請求
- 契約の解除
買主が不適合を知ってから1年以内に、売主に通知をしなければ、責任の追及はできなくなります。
雨漏りのある家を売却した場合を例にとって解説します。
【追完の請求】
契約内容に適合した不動産の引渡しを求める権利です。先程の雨漏りの例では、雨漏りを修繕することを求めることができます。
【代金減額請求】
買主が相当の期間を定めて雨漏りの修繕を求めたのにもかかわらず売主が修繕をしない場合や、そもそも修繕が不可能な場合、売主が修繕を拒否した場合には買主は代金の減額を請求できます。
【損害賠償請求】
契約内容と適合しない不動産を引き渡されたことによる損害について買主は損害賠償請求ができます。ただし、売主が雨漏りがあることを知っていたり、過失があることが必要です。
修繕や代金減額請求をしていても、ダブルで損害賠償請求が可能です。
【契約の解除】
買主が雨漏りの修繕を求めても、売主が行わない場合、買主は契約解除ができます。そもそも引渡しすらできない履行不能の場合は、買主からの催告なく無催告解除が可能です。
ただし、不適合の程度が軽微な場合は解除は認められません。
契約不適合責任のリスクを減らすには?
中古住宅の場合は特に、経年劣化による不具合が発生していることも多く売主の気付かない不具合について、後ほど思わぬ費用が請求するリスクがあります。
そのための対処法が次の3つの方法です。
1.ホームインスペクションを活用する
事前にホームインスペクションを行うことで、実家の不具合や修繕すべき箇所を発見することが出来ます。修繕をしない場合にも、売買契約書に不具合箇所を記載でき責任は負わない旨を明確にすることが可能です。
2.契約不適合責任の通知期間を制限する
買主と売主双方の合意があれば、契約不適合責任の通知期間を制限することもできます。通知期間を引渡し後3ヶ月などに制限することが多いでしょう。
3.不動産業者に売る(買取)
建物の不具合が多い、築年数がかなり古い場合などは、買取業者への売却も検討しましょう。買取業者による買取の場合、契約不適合責任を免責にしてくれることが多く、実家売却後に責任を負うこともありません。
まとめ
実家の処分には、様々な費用が必要になり、そのなかでも土地の測量費用・建物解体費用実家の片付け費用は、売出し前にかかる費用なだけに負担が大きいものです。
建物の解体や、土地の測量は行うべきか、そうでないかも含め自分だけで判断せず、不動産業者に相談のうえ、進めて行きましょう。
さらに必要経費ではないものの、中古住宅売却の際は契約不適合責任による、修繕費用や損害賠償請求にも注意が必要です。流されるままに契約をすると思わぬ出費を迫られます。
売買契約書の作り込みも重要になるため、信用できる不動産業者に依頼することが特に大切です。
実家の築年数が古く、かなり不具合があれば古屋付きで販売する方法の他、買取業者に買取をお願いするのもおすすめします。
多くの買取業者は、契約不適合責任を免責してくれるため、手離れが良く、売却後は何の心配も背負わずにすむのは大きなメリットとなるでしょう。