自治体から空き家を解体してと言われた
空き家の実家が老朽化し解体が必要
わかってはいても、「解体費用が払えない」そんな人も少なくありません。
本記事では解体費用が手元にないけど、解体待ったなしの状態のひとへ、解決方法を紹介します。さらに本記事では次のことを解説します。
- 解体せずにいるとどうなるのか?
- 解体費用とは比べものにならないリスクとは?
- 解体費用の相場動向と安くする方法
- 行政による代執行が行われるとどうなる?
また記事後半では、「相続放棄した家の解体費用は誰がはらうのか」「施設に入った親の家の解体」についても解説します。
本記事を参考に、行動をしていただければ、頭を悩ます空き家の問題の解決の糸口がみつかります。最後までチェックしてくださいね。
空き家の解体費用が払えない!の解決法
空き家を解体しないリスクは理解していても、解体費用はまとまった金額になるため、解体したくてもできないという人も少なくありません。解体費用が用意できない場合の対処法を5つ紹介します。
自治体の補助金を活用する
空き家の解体に補助金を出す自治体は増えてきました。一例を紹介します。
危険な空き家の所有者が、空き家を解体・撤去する場合、上限50万 円の補助金支給
旧耐震(昭和56年5月31日以前に着工)の空き家の所有者が更地にするために解体する場合に上限60万円の補助金を支給
インターネットで「地域名+解体+補助金」等で検索してみましょう。
空き家解体ローンを利用する
解体費用を金融機関から借りることも可能です。数年前から「空き家解体ローン」と銘打ったローンが登場しています。主に地方銀行が解体ローンを取り扱っており、無担保・無保証で借入れることができるのが特徴です。銀行によるローンの貸出上限もそれぞれです。まずは、インターネットで「空き家解体ローン+銀行名」と検索してみましょう。
インターネットで「空き家解体ローン+銀行名」と検索してみましょう。
解体しないで売却する
解体をせずに売却ができれば、売却費用に頭を悩ませることもありません。まずは、実家を含め「中古住宅」または「古屋付き土地」で売却の道はないか探りましょう。解体を検討するほどの古い家であれば、売却条件として契約不適合責任免責で販売します。一般仲介での販売活動と同時に、買取業者に買取してもらえるか確認してみましょう。
相続放棄をする
さいごは、相続放棄をする方法です。亡くなった人のプラスの遺産もマイナスの遺産も放棄するため、実家を放棄することは可能です。ただし他の遺産とトータルで考える必要があるため、まずは遺産の洗い出しが必要です。注意すべきことの多い相続放棄は、自分ひとりで判断せずに、弁護士、司法書士に相談をしましょう。
解体せず売れるのかを知る方法
解体費用が用意できない場合の対処法を紹介しました。
今にも倒壊の危険がある場合は別として、解体の前にそのまま売る方法があれば、解体費用に頭を悩ませることはありません。そのためには、多くの人に実家の存在を知ってもらうことが大切です。
次に紹介する一括査定サイトは、仲介だけでなく、不動産業者が直接買主となる「買取」の査定も一緒にできる査定サイトです。解体費用が用意できない状態であれば、買取で多少安い価格になったとしても、売ってしまうのもアリではないでしょうか。
家の解体ができないとどうなるのか?
空き家になった実家の解体ができず放置すると、次のようなことが起こり得ます。
- 近隣からの苦情
- 行政による助言
- 特定空家に指定される
- 最終的に代執行される
近隣の苦情
管理が適切にされず放置された空き家は、保安上、景観上の理由から近隣の人から役所に苦情が入ります。
行政による助言
苦情を受けた役所は、空き家所有者に対し「除草作業をしてください」等の助言を行います。
特定空き家に指定される
助言を受けても、空き家の適切な管理がされないと、行政から指導、勧告と段階を踏み、状況が改善されない場合、空き家は「特定空家」に指定されます。特定空家に指定された後、勧告をさらに受け、状況改善が見られなければ、「固定資産税」住宅用地特例から除外され、固定資産税が最高約4.2倍に跳ね上がるリスクがあります。
最終的に代執行される
改善がされなければ、勧告より重い命令が発令されます。最終通告である命令に背けば、50万円以下の罰金が科され、改善が見られないと代執行が行われる可能性があります。代執行とは行政が強制的に草木を伐採したり、建物を取り壊しを行なうものです。
代執行された費用は誰が負担する?
もし、代執行がされ建物が解体された場合、その費用は建物の所有者・所有者の相続人に請求がなされます。ちなみに代執行により所有者に請求された金額は最低50万円(三重県菰野町)から最高2,000万円(東京都板橋区)となっています。この費用を支払わない場合は、自治体は財産に対し差し押さえができますし、たとえ自己破産をしても免責はされません。
解体しない場合の最大のリスクは?
自治体による代執行の費用請求も、払えない場合はリスクですが、それにも増す大きなリスクは土地工作物責任(民法717条)です。
土地工作物責任とは、建物、塀や外構、擁壁などが崩れ、他人が死傷したり、物に損害を与えた場合にその損害賠償責任を負います。占有者が居ればまず占有者の責任が問われますが、空き家の場合は占有者がいないため、所有者が責任を負います。そしてこの責任は過失がなくとも免責されない点に注意しなければなりません。
賠償責任を負うことも大変ですが、実家の管理不足のため人に危害を与えてしまったら、本当にやるせないですね。
解体費用の相場動向と戸建の解体費用
解体費用の相場は、近年でどのように変化しているのでしょう。戸建の解体費用を坪単価でみてみましょう。
解体費用の相場は右肩上がり
解体費用の相場はここ数年、右肩上がりになっています。
その背景には、廃棄物処理法の改正や建設リサイクル法の施行、2017年の中国政府による廃棄物輸入停止や労働者不足など様々な要因があります。急激に労働者が増えたり、法が緩くなることも考えられないため、この傾向は続いていくでしょう。
戸建の解体工事費の相場
木造の建物の解体工事費は坪単価3~4万円です。
解体費用の総額は異なる
前述した解体工事費は実は解体費用の一部です。解体費用総額は、上記解体工事費の他に次の様な費用が加算されます。
項目 | 含まれる費用 |
---|---|
建物解体費費用 ※上記で解説した費用 | 躯体解体費 基礎解体費 廃材運搬費 廃材処分費 |
付帯工事費 | 養生費 植栽・付帯物・ブロック塀・土間コンクリート等の除去費 |
その他の費用 | 現場管理費 各種役所申請手数料 アスベスト調査費 重機回送費 |
特殊要因で高くなる解体費用
その他に、下記のような特別な要因があるとプラスαの費用が加算されます。
- 住宅密集地
- 道路幅の狭い場所
- 交通量や人通りの多い場所
- 騒音規制のあるエリア内
- アスベスト除去工事が必要な場合
- 地中埋設物がある場合 など
そのため、坪単価で単純に見積もれるものではありません。正確な費用を把握するには、複数の業者に見積もりを依頼しましょう。
解体費用を安くする方法
まとまった費用となる解体費用を安くする方法は次のとおりです。
- 残置物を自分で撤去する
- 草木を処分しておく
- 建物竣工図を探しておく
- 1月1日以降に解体する
- 解体業者の繁忙期を避ける
残置物を自分で撤去する
残置物があっても解体は可能です。ただし、費用が割高になるため事前に撤去をしておきましょう。
草木を処分しておく
草木の除去は付帯工事として費用が計上されます。ただし、数本の処分ではほとんど費用が変わらないこともあるため、大量に植栽がある場合に有効な方法です。
建物竣工図を探しておく
訪問見積り時に竣工図を確認してもらいましょう。解体する建物の物量を正確に把握できるため、正確な見積りを出すことができます。後付けで費用をプラスされないためにも可能であれば用意をしましょう。
複数の業者から見積もりをとる
見積もりを3社程度に依頼しましょう。出してもらった見積もりを確認し、要望通りの内容が含まれているか確認しましょう。「〇〇一式」など詳細がわからない見積もりは、作業後に追加料金を請求される可能性があるため、注意しましょう。
1月1日以降に取り壊す
固定資産税は1月1日時点の現況により課税がされます。1月1日に建物が存在していればその年の固定資産税は、今まで通り住宅用地の特例が適用されます。逆に1月1日に更地になっていると、住宅用地の特例が適用されず、固定資産税が今までより高くなります。
繁忙期の2~3月を避ける
2〜3月は解体業者の繁忙期です。この時期には、解体費用も高騰するため避けましょう。
相続放棄しても解体はできるのか?
相続放棄をすると、はじめから相続人でなかったものとされます。ですので、そもそも解体は行うことができません。逆に解体を行ってしまうと、相続放棄が認められなくなる可能性が高くなります。(法定単純承認)
相続放棄をしたら建物解体費用は請求されない?
相続放棄をすると、最初から相続人でなかったものとみなされると前述しました。
そこで問題です。相続放棄した後に、空き家の実家が「特定空家」に指定され、代執行をされた場合にはその費用は誰が払うのでしょうか?
結論、相続放棄した人が支払う責任はないと考えられます。ただし、相続放棄の時点で建物を占有している場合は、管理者としての保存責任があるため、建物を適正に管理する義務はあるとされています。なお、相続放棄の時点で実家を占有していなかった人は、空き家の管理者として責任も負うことはありません。
施設に入った親の家の解体はできる?
施設に入った親の家を解体できるか?と相談されたことがありました。
結論、施設に入っていてもいなくても、親が認知症などで意思を示すことができない場合には、子どもが勝手に解体を行うことはできません。逆に、施設に入っていても認知症ではなく、本人の意思の確認ができれば可能です。認知症である親の名義の建物を解体する場合には、成年後見制度を利用する必要があります。
やはり、実家じまいは早めに始めることが必要ですね。
解体する際の注意点
相続放棄ができなくなる
相続財産である建物を解体をすると、相続放棄をしていても相続放棄が認められなくなります(法定単純承認)。他にも相続放棄が出来なくなる行為は多く存在するため、相続放棄を検討するなら弁護士・司法書士に相談しましょう。
固定資産税があがる
1月1日時点で建物が解体されていると、住宅用地ではなくなります。そのため住宅用地の特例が適用されず、固定資産税が高くなります。市街化区域内の土地では都市計画税も課税されますが、こちらも同じく住宅用地の特例が外れ税額が上がるため注意しましょう。
【住宅用地の特例】
区分 | 土地の面積 | 固定資産税 | 都市計画税 |
---|---|---|---|
小規模住宅用地 | 200㎡以下の部分 | 価格×1/6 | 価格×1/3 |
一般住宅用地 | 200㎡超の部分 | 価格×3/1 | 価格×2/3 |
再建築不可でないのか確認する
再建築不可の土地の場合、建物を解体すると、再建築ができなくなります。再建築不可なのか不明な場合は、その土地が存在する市区町村の建築課で確認することができます。
建物があった方が売れる場合もある
不動産購入者の中には、古い建物をリフォームして住もうと考えている人や、DIYでリフォームして投資物件にしようと考える投資家もいます。こういった人達にアピールするためにも、最初は建物付きで売却活動をし、様子をみるのも良いでしょう。解体せずに売却できれば解体費用の負担もありません。まずは売却活動のスタートとして、査定を依頼してみましょう。
まとめ
建物の解体費用の相場を確認しましたが、まとまった金額になるため解体費用が払えない人や、少しでも費用を抑えたいと考える人が多いのは当然だと感じます。しかし、空き家をそのままにしていると、本記事で解説した代執行のリスク、人に損害を与えてしまうリスク、その責任を負うことも想定されます。なるべく早く対策をしなくてはまずいですね。
まずは金銭的な負担のない方法から試しましょう。具体的には、買取業者の査定も届く一括サイトで、解体せずに売れる可能性を探すことです。解体をすればお金は出ていきますが、そのまま売却できれば、逆にお金が入ってきますので試さない手はないでしょう。