実家のお仏壇は家族にとって重要な存在であり、その扱いや継承について悩むことが多いものです。
この記事では、次の点について解説します。
- 実家のお仏壇を誰が継ぐべきか
- 空き家になった実家のお仏壇の処分方法
- お仏壇や神棚の適切な処分法
- 娘しかいない家庭でのお仏壇の扱い
- 跡継ぎがいない家庭のお仏壇の処理
自分はよしとしていても、家族が「お仏壇を置きたくない」といったケースもあるでしょう。そんな場合の対処方法も記事後半で解説します。
適切な対応やマナーを学ぶことで、実家や義実家でのお仏壇問題を円滑に解決できるでしょう。
本記事では、実家のお仏壇に関する様々な悩みに対して、具体的な対処方法や考え方を提案しています。家族で話し合い、最適な方法を見つけていきましょう。
実家のお仏壇はどうする?誰が継ぐもの?
親が亡くなった後、実家にあるお仏壇はどうするのが正解でしょうか。
結論、誰が継ぐのかは話し合い次第です。
また、法的にみてもお墓やお仏壇などのいわゆる「祭祀財産」の承継者に決まりはありません。法的なきまりはないものの、一般的には次の順序で引き継ぐ人を決めるものとされています。
- 親の遺言
- 地方や親族の慣習
- 家庭裁判所
遺言が残されていない場合や遺言に祭祀財産についての指定がない場合には、現実的には親族間で話し合いをして決めていくことが多いでしょう。
長女や娘が仏壇を引き継ぐ場合の注意点
長女や娘しかいないご家族の両親がなくなった場合、次にあげる疑問がでてきます。
- 実家のお仏壇を引き継ぎたいが、嫁ぎ先には既にお仏壇がある
- 夫や義理の両親から「うちには仏壇があるから、そちらの仏壇は処分して」と言われたが仏壇を2台置くことはできないのか
- 自分は長女だが妹に仏壇を引き継いでもらえないのか
それぞれについて考えてみましょう。
嫁ぎ先に既にお仏壇がある場合
既婚の女性の場合、すでにご主人側にお仏壇があることも多いでしょう。
嫁いだのだから実家のお仏壇は処分するべき、同じ家に宗派の違うお仏壇は置いてはいけないという意見もありますが、実は絶対的なルールはありません。
先祖を大切に思う気持ちは皆一緒のはずですので、ご主人や義実家の両親とよく話し合い、実家のお仏壇をどのようにするかを決めましょう。
夫や義理の両親から実家のお仏壇の処分をすすめられた場合
先述したとおり、1つの家にお仏壇を2つ置くことがタブーとは言えません。しかし、現実的にはお仏壇を設置するスペースの問題もありますね。
結婚された場合は、ご主人様側の宗派に合わせ、お仏壇を1つにすることが一般的です。
どうしても実家のお仏壇を引き継ぎたいと考える場合は、お世話になっているお寺に相談する、小さなお仏壇に買い換えるなどの方法を検討してみましょう。
姉妹・兄弟間での取り扱い
冒頭にもお伝えしたように、お仏壇やお墓などの祭祀財産は「〇〇が引き継ぐべし」という決まりはありません。そのため、自分が引き継げない状況であれば、他の親族に引き継いでもらうことは可能です。
いずれにしても、親族間での話し合いをしっかり行い、押しつけにならないような配慮が必要でしょう。
誰もが引き継げない状況であれば、実家のお仏壇を供養し、処分することも検討する必要があります。
嫁ぎ先に既にお仏壇がある場合の対処法
嫁ぎ先にお仏壇がある場合には次の対処法が一般的です。
- お仏壇をひとつにまとめる
- 実家のお仏壇を引き取り自宅に2つ置く
- 他の親族に引き継いでもらう
それぞれ詳しく解説します。
お仏壇をひとつにする(実家のお仏壇を処分する)
そもそも一つの家の中にお仏壇が2つあることを良しとしない場合や、スペース的に実家のお仏壇を引き取れない場合は、2つのお仏壇をひとつにまとめます。
お仏壇をひとつにまとめるとは具体的に、ひとつのお仏壇に双方の家のご先祖を祀るということです。お仏壇をひとつにしたいとの旨を事前にご主人様やお寺に伝え相談をしましょう。
宗派が一緒の場合
実家の宗派と、嫁ぎ先の宗派が同じ場合は問題は起こりづらいでしょう。使用しなくなるお仏壇は、後に解説する供養を行い処分します。
宗派が異なる場合
実家の宗派と、嫁ぎ先の宗派が異なる場合は、どちらかの宗派に決める必要があります。異なる宗派をひとつのお仏壇で祀ることは好ましくないとされているためです。
結婚された場合、ご主人様の宗派に合わせることが一般的です。この場合、妻側の寺院とは縁を切る形になるため、家族や親戚と事前によく相談をしてトラブルにならないように配慮しましょう。
実家の仏壇を引き継ぎお仏壇を2つ置く
話し合いの結果、ひとつの家に2つのお仏壇を置くこともあるでしょう。2つのお仏壇を置く場合のメリット・デメリット、注意点について確認しましょう。
1つの家にお仏壇を2つ置くメリットメリット
- 宗派を変えなくてよい
- 菩提寺と縁をきらなくて済む
1つの家に仏壇を2つ置くデメリット
- 日頃のお掃除・お手入れの手間が増える
- 宗派が異なれば法要も別々に行う必要がある
- お供え物の費用も倍になる
1つの家に2つのお仏壇を置く際の注意点
お仏壇を2つ置く際には、法要で訪問するお坊さんへの配慮として、次の点に注意しましょう。
- 同じ部屋に置かない
- 仏具を共有しない
スペース的に別々の部屋に置くことができない場合には、コンパクトなお仏壇に買い換えることも考慮してみましょう。
空き家の実家のお仏壇はどうする?
空き家になった実家に、そのままお仏壇を置いているケースも少なくないでしょう。
現代の住宅事情を鑑みれば、仏間もなく、インテリアとのバランスもとれないので、そうなってしまうのは当然かもしれません。しかし、空き家にお仏壇を置いておくことは避けましょう。
お仏壇は風通しがよく、毎日礼拝を行える場所に置くことがベストです。
空き家においたままでは手を合わせることもできません。空き家に置かれたお仏壇は、引き取るか処分することを検討しましょう。
空き家の実家のお仏壇や神棚を処分する方法は?
【 魂抜き】お仏壇処分前に供養を行い、安心して手放そう
お仏壇を移動、処分する前には魂抜き(閉眼供養)を行います。
魂抜き(閉眼供養)とは、お仏壇から魂を抜き、感謝を伝えることです。魂抜きは宗派により、「魂抜き」「お性根抜き」「閉眼供養」と呼ばれています。
魂抜きの費用相場
魂抜き(閉眼供養)の費用相場は1~5万円の範囲が一般的です。お坊さんが遠方から訪れる場合には車代も併せてお渡しします。
お世話になっているお坊さんがいない場合は
宗教離れに伴い、菩提寺がなく、お坊さんとの接点がない人も増えています。さらに閉眼供養の費用は「お布施」として渡すため、明確な金額提示がないことを不安に感じる人もいるでしょう。
お坊さん便」をおすすめします。
そのようなケースでは低額でお坊さんを派遣してくれる「- 定額で供養をしてもらえる。閉眼供養は総額35,000円(初回利用時)
- Webから予約が出来る
- 主要な宗派に対応している
- クレジットカード払いも可能
魂抜きの後のお仏壇の処分方法
魂抜きの供養後のお仏壇の処分は次の5つの方法があります。
自分で処分
魂抜きを終えると、お仏壇は魂が抜け、家具となります。
自治体で粗大ゴミとして回収して貰うのが1,000~2,000円程度と最も安価な方法になります。
- 安価に処分できること:お坊さん便を利用した閉眼供養+自分で処分の場合は36,000円~37,000円程度
- 粗大ゴミの回収日にしか処分できない
- 高齢の方が目にすると、不愉快にさせる可能性がある
お寺に依頼
魂抜きと同時にお仏壇処分も依頼できる場合があります。
菩提寺がある場合は菩提寺に、菩提寺がない場合は、宗派の同じお寺に依頼をします。
- 安心感がある
- 魂抜きと同時に依頼できる
- 費用が不明確なケースが多い
- お仏壇を持込む必要がある
仏具店に依頼
お仏壇を新たに買い換える時には、仏具店に処分を依頼できます。
処分だけでも受けてくれる仏具店もあります。
- 宗派を問わない
- 魂抜きと同時に依頼できるケースが多い
- お仏壇を自分で運びこむと安くなる仏具店もある
- 処分だけを依頼する場合は割高:お仏壇のはせがを参考にすると、処分のみの場合サイズによって49,500~79,200円(税込)、買い替えの場合は19,800円(税込)です。参考:お仏壇のはせがわ
仏壇処分・移動専門業者に依頼
お仏壇の処分、移動のみに特化した業者で、閉眼供養から処分まで一括で依頼ができます。
お坊さんが運営している豊恩のような仏壇処分サービスも登場しています。
- お仏壇の回収の前に、魂抜きを行ってもらえる
- 安心感がある
- 費用が高め(相場は25,000円から8万円程度)
遺品整理業者に依頼
遺品整理を行う中でお仏壇も処分します。
一括で実家の片付けができるため依頼者の負担は少ない方法です。
- 遺品整理と一括で依頼できるのでラク
- 費用は遺品整理の費用に含まれることが多い
- お仏壇を運び出してからの供養になるケースが多い
不用品回収業者に依頼
不用品回収業者でも仏壇の処分は行っています。
魂抜きをしていない状態では,回収してもらえないこともあるため、事前に問い合わせをしましょう。
- お仏壇サイズにより5,000円~20,000前後と費用が安い
- 魂抜きは自分で手配をする必要がある
- 魂抜きを依頼できる場合も、仏壇を運び出してからの供養となる
神棚の処分はどのようにする?
神棚の処分には次の3つの方法があります。
どの程度までの供養をしたらよいかは個人の考えにもよってきますが、次の様に分けてみましたので参考になさってください。
祈祷を受ける
神棚を神社へ持ち込み、祈祷を受けた後、神社でお焚き上げをしてもらう方法です。神様が宿っている神棚をそのまま処分するのは失礼と考える人におすすめの方法となります。
祈祷料は6,000円~20,000円ほどが相場です。
御神札返納する
神棚の中の御神札を神社の「お札返納所」へ返納し、その後に自分で処分する、どんどん焼きなどで処分する方法です。
祈祷をするまでではないものの、供養が気になる人におすすめの方法となります。
どんどん焼き
神社で毎年1月15日に行われるどんどん焼きで燃やしてもらう方法です。
どんどん焼き自体に供養が含まれると考えることもできるため、そこまで厳密な供養に拘らない人にはおすすめの方法となります。
費用相場は3,000円前後です。
お仏壇・仏具・お位牌の適切な処分法
お仏壇と共に仏具・お位牌もまとめて処分がベスト
お仏壇の処分と一緒にお位牌や仏具の処分をします。
お位牌の処分の前には、お位牌の閉眼供養を忘れずにしましょう。
お位牌のみ自宅で祀る
お仏壇は処分しお位牌だけを自宅で祀ることも可能です。
一時的に預ける
お位牌の安置を迷う場合には、お寺に一時的に預かってもらうことができます。
月単位や年単位で預けられるので、費用を含め、お寺に相談をしてみましょう。
費用相場は年間1~3万円程度です。
永代供養する
お位牌をお寺で供養・管理をしてもらう方法です。
お位牌を合同で永代供養する場合は5万円前後ですが、個別に永代供養をして貰う場合は10~50万円程度の費用がかかります。
お寺によって費用の幅が大きいため、永代供養を考える場合は問い合わせが必須です。
お仏壇の移動にも供養が必要
実家からお仏壇を移動する場合は、次の2回の供養が必要になります。
魂抜き(閉眼供養)
お仏壇を処分するときと同様に、移動をする前にも魂抜きを行います。
魂入れ(開眼供養)
自宅に到着したお仏壇は、移動前に魂抜きをしたため家具同様の状態です。そのため新たに魂を入れる魂入れ(開眼供養)を行います。
- 普段お世話になっている菩提寺
- 菩提寺がない場合はお坊さん便
跡継ぎがいない家庭のお仏壇はどうする?
今は、結婚をしても子どもを持たない夫婦、生涯独身で過ごす人も多く、親からお仏壇を継いでも、跡継ぎがいないといったケースも少なくありません。
兄弟や親戚がお仏壇を継ぐことも可能ですが、宗派の違いなどからスムーズに引き継げないケースもあります。自分の代でお仏壇を処分するのは・・と感じる方もいるでしょう。
しかし、大切なのはご先祖様に感謝する気持ちです。跡継ぎがいないお仏壇は処分することも検討してみましょう。
お仏壇を置きたくない場合の対処方法
- 「インテリアとの調和がとれない」
- 「そもそもスペースがない」
- 「親戚がお参りに来るのは面倒だ」
価値観は人それぞれ、状況もそれぞれです。
様々な事情により、お仏壇を置けない場合には次のような方法もありますよ。
お位牌のみ祀る
お仏壇はスペース的に厳しい場合、お位牌のみを祀る方法もあります。
ご先祖様に感謝する気持ちが何より大切なので、お仏壇がない場合にお位牌のみをお祀りすることは何ら問題はありません。
コンパクトでおしゃれなお仏壇を購入する
インテリアに合わないので、お仏壇をできれば置きたくないという人は、インテリア調のお仏壇を探してみてはいかがでしょうか。
最近ではコンパクトなものからおしゃれなものまで、様々なお仏壇が販売されています。
出典:アンティーク調仏壇-ボヌール-クラシック|モダン仏壇の通販-ルミエール
自分なりの供養の方法を決める
事情によりお仏壇やお位牌を置けないこともあるでしょう。
その場合でも、自分なりの供養方法を決め、個人を偲ぶことができればよいのではないでしょうか。
手元供養は遺骨の一部または全部を自宅や身近な場所に保管して供養する方法です。
遺骨ペンダント
遺骨や位牌の一部を納めペンダントにした遺骨ペンダントは身につけることができる手元供養のひとつです。
ミニ骨壺・供養台・写真立てのセット
手元供養に必要な物がそろったSoulJewelryは場所を取ることなく、インテリアの邪魔にもなりません。
まとめ
現代は跡継ぎのいないお仏壇も増え、住宅事情も相まってお仏壇じまいを検討する人も増えてきました。
先祖が大切にしてきたお仏壇を引き継げることがベストですが、なかなかそうも言っていられない事情もあります。
しかし、何より大切なことは、ご先祖様に感謝をすること、ご先祖様を敬う気持ちです。空き家にそのまま置かれたお仏壇は、風通しの悪い場所でホコリを被ってしまっているでしょう。
跡継ぎのいない仏壇は、この機会に処分することを前向きに検討してみましょう。
実家や嫁ぎ先での仏壇の問題は、家族や親族とのコミュニケーションも重要な要素となりますので、お互いの意見や希望を尊重し合いながら、最善の方法を見つけていくことが大切です。